01


如月伸太郎は化物であった。
人間離れした頭脳。
本来ならばメデューサしか持つことの無いはずである能力。
これらを見て、果たして如月伸太郎が化物では無い。と言い切れる者はいるのだろうか。

―――否。
赤いマフラーを着けたあの子。泣き黒子の彼。電子だった彼女。赤い目のあの子ら。
そして、女王でさえも。
如月伸太郎のことを化物だ、異質だと。

嘲り、

罵り、

蔑み。

そして糾弾したのだ。







嗚呼、なんと愚かなことだろう!これまでやってきたこと全て、彼のおかげで成功しているというのに!!
嗚呼、なんと愚鈍なことだろう!あの子らと違い、彼は今も昔も化物と呼ばれ、迫害されているというのに!!
嗚呼、なんと悲しきことだろう!彼はそれでも彼女らを愛しているのだ!!







――それでも、それだけ彼が目を掛けていても、誰も。彼の、如月伸太郎の「歪み」に気付かない…
                                     (そして、そのツケを払う時が来る)




「『あれれ、どうしたんだい?皆集まってさ。』『パーティでもするのかな?それなら、1人だけ仲間はずれはひどいじゃないか!俺のことも誘ってくれれば良かったのに!ひどいなぁ。』」

馬鹿にしたように、お芝居の台詞みたいな口調で話しかける。
言外にこれから起こることも全て把握していることを滲ませたけど、わかるかなー?いや、わからないだろうな。馬鹿だし。



――それにしても、さっきの台詞を聞いた奴らは皆ぽかんと口をあけて俺を見ているんだけどね、さっき俺が話しかけてから、実は5分経過してるわけ。だけど誰も現状を把握しきれてないからかな?まだ誰も1歩も動いてないんだよwまるでマリーと目を合わせたみたいにかっちこちww

あ、動いた。

やっと動くようになったと思ったら、この場で一番冷静にならないといけないはずの彼女はおろおろするばっかり。
ついこの前まで電子のスーパープリティーガールエネ(笑)ちゃんだった先輩()も、真夏日でも赤いマフラーを着けているお馬鹿(あらゆる意味で)な同級生も。
みーんなあたふたしてばっかりw

「『まぁまぁ、少しは落ち着きなよ。』『そんなことばっかりしてたらカノ君みたいにはげちゃうよ?wwカノ君みたいにさww』」
「なんで2回も言うのさ!2回も!!あと僕ははげてなんかないってば!!ちょ、ちょっと!?なに!?その、あぁ…(察し みたいな顔は!!」
「すまなかったな…カノ。」
「こっ、今度、育毛剤、つくろうか…?」
「ひじきを食べるといいって聞いたことあるっスよ!」

「『ふふっよかったねぇカノ君。』『君はこんなにも仲間に思われているんだ!!』『―まぁ、奇しくも俺は、その対象に入らなかったみたいだけどねぇ…?』」

にこにことその場の当事者らしからぬ態度でメカクシ団とやらを茶化す。
どうやらカノ君は《欺く》のが得意みたいだ。
まぁ、俺から見れば、ばればれなんだけれども。
どうやら、今度は俺が馬鹿にしていたことに気付いたらしい。顔を真っ赤にして俺を睨んでいる。

とて、と可愛らしい擬音でも出そうな軽い足音。
ぱ、とそちらを見ると、まるで不思議の国のアリスみたいなエプロンドレス。

「『やぁ、マリーちゃん。』『どうしたんだい?』」

聞いてみるとマリーちゃんはとても不思議そうな顔をして俺の顔を見る。
―俺の顔に何か付いてるのかな…
ぺたぺたと何か付いていないか顔を触ってみる。
―特に何か付いてる訳じゃなさそうだけど…?
いよいよマリーちゃんが俺を見ている意味が分からない。

「『―?』」

首を傾げてマリーちゃんを見ると、一瞬怯えたようにびくっ、と肩を飛び跳ねらせてからおそるおそるという風に話しかける。

「あ、あのねっ!」
「『うんうん。』『どうかしたのかな、マリーちゃん?』」
「シ、シンタローは、どうしてそんな口調で喋ってるの?」

「『嫌だなぁマリーちゃん!』『俺は昔から、精密にいうと17年前から、ずぅーーーっとこんな口調だったじゃないか!!』『忘れるなんてひどいなぁ。』『ねぇ、《女王》さま?』」
「『それに、そんなことを気にしてたって、仕方ないじゃないか!』『もっと気楽に行こうよ、気楽にさ!!』」

両手を目一杯広げて笑う。心底おかしいみたいにくすくすと笑いながら。
ふ、とメカクシ団とやらを見ると殆んどのメンバーが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
―ざまぁみろ。これがお前達が目を逸らした結果だ。
なんて、チープな言葉が頭によぎる。

――どうでもいいけど《目を逸らす》ってなんかカッコいいよね。カゲロウデイズの特殊能力とかで出てきそうだ。
―え?メタい?何を言ってるか解んないなぁ
「『そんなことを考えつつ、俺は、もうここに用は無いとでもいうように、メカクシ団とやらからつい、と目線を外した。』」
「いや、シン兄目線外してないし。」
「『――あれ?』『ヒビヤ君ってば、もしかしなくても、エスパーだったの?』『目《心》を盗むのは、セット君の専売特許だと思ってたんだけどなぁ。』『盗ったら可哀想、だよ?』『―あ、これぞまさに《目を盗む》!だね!!ひゅー!ヒビヤ君かっこいー!!』」
「いろいろツッコミたい所あるけど、とりあえずさっき考えてたことは全部口に出てたからねシン兄!」


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