01

昼下がりの、灰色の空の下……
学校の先生で、親友といってもいいほどの仲であるケンジロウと、シンタロー達双子は、ケンジロウの運転する車に乗り、美術館へと向かっていました……

「2人とも、忘れ物はないか?」
ハンドルを握り、俺たちの方を向いてケンジロウは言う。―どうでもいいけど、危なくないか?運転してる最中なんだから前見ろよ。でもさ、忘れ物とか…
「むしろ、あると思うか?」
「いや、ない。」
「だろうな。―そういえば、あれは持ってきたか?ほら、お前らが誕生日の時にやったやつだよ。」
「ああ、あれ?持ってるぞ。」
「俺も。」
「持ってるならいい。―いいか。ちゃんと、肌身離さず持っておけよ。何かあったときのためにな。」
「ケンジロウは大げさだなぁ……」

「さぁ、着いたぞ。―お前らは美術館、初めてだったよな?」
「ああ、確かそのはずだったと思う。」
「今日観に来たのは、『ワイズ・ゲルテナ』っていう有名な画家の展覧会で、絵だけじゃなく、彫刻とか、色々と面白い作品があるらしいぞ。このパンフレットに書いてある通りなら、どうやら結構クセのある作品ばかりらしい。」
「―おい。長々と説明する前に、受付を済ませようぜ、ケンジロウ。」
「あぁ、喋りすぎたか?まぁ、そうだな。さっさと受付を済ませちまうか。」
「――なぁ、先に観に行っててもいいか?」
「え?先に観てるって……お前が、そんなに興味をもつなんて珍しいな。いいぞ、俺は受付を済ませておくから、2人で観てこいよ。ほら、シンも。」
「言われなくても。」
「あぁ。2人ともわかってるとは思うが、美術館では静かにしろよ。あと、火気厳禁だからな。」
「―おう。じゃ、行ってくる。行こうぜ、シン。」








受付を通りまっすぐ歩くと、前方に続いていく道。左手には上り階段がある。
「どっちから観るんだ?」
結構な悩みどころだ。基本的に展覧会というものは、一フロアで形成されているのが主だ。そういうタイプのものは、入口から発表順に並べられている。さながら誕生録のように。
しかし、たまに今回のように、二つのフロアに分けられている場合がある。その場合は、大体は一階に大きい作品。二階は小さい作品。という風に分けられていることが多い。
何故か。それは、わざわざ二階に大きい作品を持って上がろうとして、作品を傷つけてしまったら元も子もないからだ。
―まぁ、こんな風につらつらと情報を並び立てたところで意味もない。
要するに、大きい作品から観るか。小さい作品から観るか。それだけの話。
「―大きい作品の方から観るか。」
小さい作品はケンジロウが来てから観た方が面白そうだ。
「わかった。」
二人で前の道を進むと、不意に大きく開けた場所に出た。左に張り紙があったので、何となく読んでみる。

『ようこそ、ゲルテナの世界へ』
本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。
当館では現在【ワイズ・ゲルテナ展】を開催しております。
ゲルテナ氏が生前描いた、怪しくも美しい絵画たちを、どうか心行くまでお楽しみくださいませ。
                                           **,**,**








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