替えのきかない答え






私の心は欠陥品でした。
いろんな人が持つ感情の1つを、私は持ち合わせていなかったのです。
私は小さい頃からそれを理解し、周りの人たちと同じようにするよう努めていました。
人に好かれたいから、少しおバカな愛される仮面を作りました。
義兄妹ができたから、お姉ちゃんの仮面を作りました。



そんなある日、私と似ていて、私と違う彼が言いました。

「お前は、俺に似ているな。」

―気付いていたのです、彼は、私の仮面に!!
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい!!思考はその一言に染まり、私はただ、感極まって泣くことしかできませんでした。
そんな私を、彼は****ものを見るかのように眺めていました。ゆぅるりと目を細めて、私のことを、ただ、見ていました。

ある日、仮面をつけていた私は、誰かのために死ぬこととなりました。屋上の淵に座り込んでいると、下から風がごうごうと強く吹きつけ、かたかたと両足が震えます。別に、死ぬことは怖くはありません。ただ、仮面をつけたまま死に往くこと。彼の目の前で死ねないことが、唯一の心残りであっただけなのです。

屋上から飛び降り、地面の近づきつつある空中でそう考えながら、



―私は死にました。

ええ、死にました。私はあの時、確実に死んだのです。なのに、現に私はこうやって話すことができています。何故か、理由は分かりきっています。

―カゲロウデイズ内部への侵入。
それを私は、必然的に偶然成功させてしまったのです。
私は、嬉しかった。彼にまた会えるかもしれない。淡く、とても脆い希望です。彼が真実を知らない限り、会うことなどできるはずもないのですから。




そう考えていた私の、淡い希望は打ち砕かれるはずでした。
ところが、2年と幾ばくかの月が過ぎ、




―彼が、私のところへとやってきたのです。
どうやら、彼は数奇な運命に恵まれたのかもしれません。
彼が言うには、2年ぶりに出かけたデパートでテロに遭い、気絶したところを義兄妹たち、メカクシ団に助けてもらったのだと。
そう言ったあと、彼は泣き笑って、私にこう言ったのです。


「アヤノ、*****。」

―その言葉は私の胸にすとんと落ちてきました。
私の心に足りない最後の1ピースを、彼は、埋めてくれたのです。



ですが、彼が突然消えてしまった日のことです。
私の心にあったピースが、色を透明に変えてしまいました。






―今も、その時聞いた彼の言葉は、思い出せないままです。












    か え の き か な い こ た え
                     (あいしていたのに、)

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