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 カゲロウデイズの入り口が閉じる。

「終わったん、だね。」
「―あぁ。」

 カゲロウデイズは終焉を迎えた。カゲロウデイズの女王、―管理者の方が分かりやすいだろうか?―マリーが暴走を起こして始まった今回の事件は、呆気ないほど簡単に解決した。マリーが暴走した理由は「ひとりぼっちは嫌だ。」といった感情からだ。即ち、「ひとりぼっちなんかじゃない。」とマリーに俺たちで教えてやればいい。その一言で物語は終結する。
 しかし、ここで問題があった。―クロハの存在だ。

 願いを叶えることができる蛇。目が冴える蛇、通称クロハ。
 願いがないと存在できない、不確かな蛇である。
 マリーの「ひとりぼっちは嫌だ。」という願いを叶え続けて生きながらえようとし、俺たちを殺し続けていた。
 何故俺たちが、簡単に殺され続けていたか。それは、“目が冴える”と言われているだけあって、思考力が高く、また、俺たちと違って、ループ毎に記憶が消失しない点が大きいだろう。
 だが、何回目かのループで俺に発現した“目に焼き付ける”能力により、全ループの記憶が手に入った。
 その記憶を元に構成した最善策を皆に伝え、事態は終結。クロハの無力化に成功した。
 そこから先は、あまり覚えていない。何故なら、マリーによって“目を合体せる“能力が効力を発揮して、カゲロウデイズ内から学校の屋上に一種のテレポーテーションのようなものをしたからである。ただ1つ覚えていたのは、顔までは見れなかったので、誰かは分からないが、途中で黒い何かに抱き留められたことだけだ。
 ―あれは、誰だったんだろうか。

『―ねぇ、主。』
「なんだよ、焼き付ける。」
『何故、僕を置いていかなかったんだい。』

 カゲロウデイズの攻略終結において、メカクシ団が持つ蛇の能力は消えた。元々コンプレックスだった能力がなくなり、皆は大層喜んでいたが、俺は自身の保有する蛇“焼き付ける”を持ち続けることを望み、そして、今も俺の中には“焼き付ける“がいる。
 どうして焼き付けるが現実世界でも存在することができているのか、冴えるが願いを叶えないと存在できなかったように、焼き付けるにも、何かしらの代償が必要なのではないか、そう聞いた俺に焼き付けるが言ったのは「僕は、もう僕が存在するために必要不可欠な代償を、君に与えてもらっているからね。」という一言だった。
 話は変わるが、どうしてメカクシ団のみんなが五体無事に現実世界へと戻ることが出来たのか、皆はクロハというラスボスを倒したから、と考えているが、真実はまったく違う。
 カゲロウデイズには、絶対不変の掟がある。それは、カゲロウデイズから侵入、脱出するときは、必ず《8月15日12時30分頃に2人、またはそれ以上で死なないといけない》ということだ。
 この掟を知っているのは、アザミとケンジロウとクロハと焼き付けると、そして俺だけだ。メカクシ団のみんなは何も知らない。気付いていない。
 そういえば、カノはこのことに気付いたような気がしていたが、どうやら杞憂だったようだ。
 何故か。
 それは、今。カノは笑えているからだ。欺く蛇がいない今、あんなに綺麗に笑えるのは真実を知らないことと同義。
 人間は、なにかしらの隠し事があると上手く笑えなくなる。どれだけ演技が上手くても、欺く蛇に能力を借りたとしてもだ。嘘を吐くと絶対に、なにかしら身体に支障をきたす。
 だから、カノは何も知らない。カゲロウデイズは無事に攻略されて、かえって来ないものもあったけれど、ハッピーエンド。そう思って、みんなと笑いあっている。

ああ、本当に。

























―――本当に、馬鹿馬鹿しい。


 どうしてそんなに能天気に笑っていられるのか、不思議で堪らない。思い知ったんじゃなかったのか。如何に世界が理不尽で、不条理で、不合理で、突飛なのかを。本当に何も気付いていないんだろうか。もしかしたら、皆真実を知っていて、そして知ったまま目を逸らして笑っているのだろうか。本当は自分の蛇を犠牲にしていることも全部わかって……いや、これ以上は止めよう。なんだか、このまま考えていたらキャパオーバーしてしまいそうだ。
 ―あぁ、でも。全部、こわれてしまえば…

『主!?』


「『堕ちておいでよ。』」


そう考えた、俺の目には、まっくらな、やみ、が・・・


「シンタロー!?」






***01 END




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