※暗い





嗚呼また、酷く煩い。

このところ毎週のように響く耳鳴りに悩まされている。
往々にして食事中であったり水浴びの直後であったりするのだが、とにかく鬱陶しくて仕方がない。

今日のそれは戦闘中にきた。
それも、自分と同じ顔を持ち、同じ武器を使い、同じ身のこなしで襲ってきた兵士を一閃したその瞬間であった。


――キイィィン

細胞の死ぬ音がする。


戦闘を終えてなお鳴り止まない耳鳴りに、頸動脈を押さえた。
この行為で耳鳴りが治まるわけではないが、何となくしてしまう、癖のようなものだ。
音が止んだ後もそれを確かめるように微動だにしないクラウドに戦闘を終えたセシルが近付いてきた。

「どうしたんだクラウド。怪我は無いようだけど…大丈夫なのかい?」
「ただの耳鳴りだ。気にするな」

セシルはそれならいいけど、と納得した様子だった。
フリオニールとティーダも戦闘を終わらせて集まってくる。

クラウドは静かに目を閉じた。
背中に感じる重みはもう慣れたものだ。
鉄だけでなく、この大剣には様々な思いが詰まっている、その重さなのかもしれなかった。

目を開けて、つい先程まで青白い自分と戦っていた辺りを振り返ったが、当然、兵士の大剣は残されていなかった。
ふとある仲間の顔が浮かんだが霧散した。
彼には関係のないことだ。

親友がいた。
守れなかった人もいた。

耳鳴りと共に蘇った記憶を指先に込め、そっと背中の大剣に触れた。




――キイィィン

また、自身の一部が死んだ音がした。









耳鳴りは聴細胞の死ぬ音らしいです?雰囲気ssなので深く考えたら負け
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