零VS真久郎 [ 38/50 ]


「チーム日本文化、ねぇ…」

対抗戦の組み合わせ表を見て夕介がぽろりと漏らす。
今夕介が読み上げたのは今回の対抗戦の相手チームだった。

「俺全然覚えてないんだけどどんなチームだっけ?」
「私も分からないなぁ…零と朝陽くんは?」
「チーム日本文化は確か…鐙瀬兎がリーダーのチームワークが素晴らしいチームだな」
「全員漫画とかアニメとかゲームとか好きなチームだよねー」
「…あーはいはい、あの」
「オーダーはどうするー?」

朝陽の一言に少し考える。
あのチームは確か…リーダーの鐙瀬兎が戦闘能力が最も高くて一番最後のソロに出てくる筈だ。
本来なら私が鐙とぶつかるところだが…。

「私が最初のソロに出よう」
「零が?珍しいね」
「そして夕介が最後のソロに出てもらう」
「俺?何で…」
「おそらくラストに鐙瀬兎が来るだろう。彼女は強い。良い経験になると思う」
「ならボクとレイラがタッグだね、よろしくレイラ」
「よろしくね」

さっさかオーダーを決めて会場に足を運ぶ。
道中におそらく相手のオーダーは野谷真久郎、武居川怜と堺悠生、鐙瀬兎の順に来るだろうとか、悠生の毒には気を付けろ等の情報交換を済ませ、会場に着くと奴さんは既に到着していて、私達を待っていたようだった。

審判に前へ出るよう促され、柵を越える。
数メートル離れたところから野谷と睨み合う。睨み合う、といっても奴は人が苦手なのか女性が苦手なのか目を逸らしたりもしていたが。
ピリッとした緊張感漂う空気の中、審判が冷静に息を吸う。

「対抗戦、チーム名決まらんvsチーム日本文化。
第一回戦、暮乃宮零vs野谷真久郎。試合開始!!」

審判が声を張り上げたのを耳に利き足を思いっきり踏みこんで相手の懐に入り込む。

「うわっ、っとぉ!?」

驚いた野谷が後ろに下がろうとのけぞったのを見て即座に奴の襟と袖を掴み、引く。
後ろに行くはずだった体が前に出るのを反抗できる筈もなく、足をさばいて踏み込み、体を沈めて勢いに任せて野谷を背負い投げる。
受け身の取れなかった野谷が見事に弧を描いて地面に叩きつけられた。
地面に倒れた野谷と目が合う。
奴の袖を掴んでいた左手が痺れ、力が弱まった隙に掴まれた袖を振り払ってすぐに起き上がり、距離をとられる。

今の野谷の目は、鋭い。

「…なるべく、使いたくなかったけどな…ッ!!」

そう野谷が呟くのが耳に届いたと思ったら目の前に膝。

「ッ!?」

咄嗟に首を後ろに逸らして避ける。
そのまま左足を後ろに1歩下げ、それを軸に体を回転させて後ろを振り向く。
野谷の体を視界に入れたと思うと野谷が素早くかがみ、こちらへと飛び込んでくる。
そのスピードはとても速く、かわしきれそうにない。
一か八か、こちらに飛び込んでくる野谷の懐に向かってこちらも飛び込む。
腹に正拳を叩きこみ、こちらにやってきた野谷のスピードと私のスピードが合わさって確かな手ごたえを感じると共に野谷が力なく倒れた。

「試合終了!一回戦はチーム名決まらんの勝利!」

そう審判の声が響き渡り、一息。
正直言うと危なかった。
これからは慢心には気を付けるべきだな……もっと精進するべきか。

チーム名決まらんVSチーム日本文化
第一回戦勝利者、暮之宮零


「あちゃー、完全に目回してるね真久郎」
「女子の顔面に膝蹴りはどうかと思うのよねアタシ」
「そこはしょうがなかったんじゃねー?引き籠りだし許してやれよ」


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