Info Text Memo Form



 夕日に照らされたコートが綺麗だった。気がつけばそろそろセミの鳴き出す季節。以前より気温が上昇して暑さを極めている。
 ドリンクの消費も同時に早くなっているので休む暇なく水道とコートを往復して皆にタオルを渡してドリンクを補充しての繰り返し。練習の合間にメニューの記録をしたりとにかく最近は以前よりやることが多く感じる。

「早く夏休みにならへんかなー。」
「期末テストが終わったら夏休みやん。」

 唐突な白石くんの一言で場に沈黙が流れた。「なんで今そんな話すんねん。」と忍足くんが軽く突っ込むものの、とにかく空気が重くなった気がする。
 たったの三文字で気持ちをどん底に突き落とせるのだからテストという言葉の力は本当に凄まじい。

「金色は勉強出来るしええよなぁ。」
「苗字ちゃんはお勉強得意なん?」

 忍足くんのため息をあっさりスルーして金色くんが私の方に話を振る。お勉強って言い方が可愛いというか金色くんっぽい。いやそんなことはどうでもいい。

「理数系は苦手かなぁ。」
「そうなん?せやったら教えよか?」
「いいの?」
「当たり前やん。困ったときはお互い様やで!」

 じゃあ来週の放課後に図書室で待ち合わせね、と金色くんがスケジュール帳に印をつけた。それと同時にぴたりと少し前を歩く白石くんの足が止まる。不自然に鞄のなかをごそごそと何かを探しているみたいだった。

「白石?」
「あー、教室にノート置き忘れてしもた。みんな先帰っといてや。」
「おー……。」

 そう言って白石くんが校舎に走って戻って行った。「ほな先に帰ろか」と一足先に私たちは帰路に就いた。今は普通に帰ってるけど、明日からテスト期間が始まるから違うクラスの皆と部活では少しだけ会えないんだった。ちょっと寂しくなりそう。

「皆は忘れ物してへんか?」

 忍足くんの言葉に念のため気になってちょっと鞄を開けてみた。目で確認できるものだけで教科書、ノートがあるのは分かった。ひやっと嫌な予感がしたのはそのすぐだった。

「あ。ペンケースない……。」

 教科書とノートの間も調べてみたけれど特に感触なし。部活でノート書いてる時まではあったから部室かどこかに置いてきてしまったのかもしれない。

「もうそろそろ暗くなるで?」
「走れば多分大丈夫だと思う、先帰ってて!」

 ひらひらと手を振って今通ってきたばかりの道を逆戻り。最近、力仕事はしててもあまり走ってなかったからちょっと走っただけでも息切れしそう。