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 昼休み真っ只中。クラスの子とお弁当を食べ終えたところだった。
 他のクラスの女の子が「白石くん、いますか。」と白石くんを呼び出した。何やろなぁと周りはどこかにやけた感じだった。部活とか委員会絡みかと思ってたけどそうではなさそうだ。そして白石くんは女の子とどこかへ消えていってしまった。

「苗字!」

 それから間もなく次に教室に来たのは忍足くんだった。何故かは知らないけどすごい気合が入ってる。

「どうしたの?」
「どうしたの?やあらへん。白石や白石。」
「今女の子と教室出てったけど……。」

 やっぱり、と言った様子で忍足くんが頷く。

「行くで。」

 どこに、と聞く間もなくぐっと私の手首を掴んで半ば引きずるようにどこかへ連れていく。次の授業の準備がまだなのにと教室を尻目に見ていると、行ってらっしゃいとでも言うようにクラスの子が手を振っていた。待って。

*

「ちょっと、何なの。」
「しーっ、静かに!」

 連れてこられたのは校舎裏。人通りの少ない場所だった。というか私より忍足くんの方が声が大きかったけど当の本人は自覚がないみたいだ。
 見てみ、と指を指された先には白石くんとさっきの女の子の姿。これはもしかしなくても多分あれだ。告白現場だ。

「こういうの覗くのって良くないんじゃ……。」
「何言うとんのや、ここまで来たら共犯やで。」

 帰ろうとした私の腕を忍足くんが頑なに離さない。意地でも私を共犯者にしたいらしい。

「白石って結構モテるんやで。今月もう何回かも分からんわ。」
「へー……。」
「なんや興味なさそうやな。」
「いや、覗き見してるっていうこの状況がどうも……。」

 白石くんに興味がない訳ではない。最初ちゃんと見たときに正直カッコいいと思った。爽やかで多少強引だけども人当たりもいいし勉強もスポーツもできる。天は二物を与えずというけれど彼の場合は二物どころか三物も四物も持っている。あとは部活の件とか諸々あるけど本当にそれだけ。

 少しすると女の子が走って私たちのいる方向とは逆方向に走って行ってしまった。多分上手くいかなかったんだろう。この数分を見るために来たのかと思うと野次馬するのが改めてしょうもないような気がしてきた。一方で忍足くんは落ち込んだみたいに萎み出した。

「どうしたの?」
「いや、何でもないわ……。」

 さっきまではあんなに引き留めてたのにあっさり帰された。もうこの後忍足くんだけ見つかって怒られたらいいと思う。
 予鈴が鳴って慌てて教室に戻るとさっきまで手を振っていた女の子達がぞろぞろと席を立って私の周りを何人かで囲んだ。転校初日を思い出す光景だ。

「なまえちゃん!どやった?」
「何が?」
「何って……ほら、その、OKしたん?」

 遠回し気にそわそわと具体的な言葉は出さなかったけれどOKっていう言葉でさっきの告白のこととリンクした。

「うーん……あんまり公にすることじゃないと思う……。」
「せ、せやな……なんか堪忍な……。」
「え?うん……。」

 そして翌日、なぜか忍足くんはすごい落ち込んでるしで忍足くんが私に振られたとか言う変な噂が流れることになった。「そんな仲良かったっけ」と白石くんからの視線がやたら痛い。何かがいろいろ間違ってる気がする。