20年前

「あ…ああ……」
愛する妹の名を叫ぼうとしても、痙攣する喉は掠れた音を出すだけだ。目の前に立つ人間の名など忘れてしまった。キャリーが、死んだ。




――違う彼のせいじゃない!違う!違う!止めろ!

手が止まったのは血の色をした光が死体だらけの地を照らし始めた頃だった。

「ロ…エ、ン」

「いいのですよ」

「俺は」

「あなたはこの国の王に相応しい人間だ」

「俺は王になれるだろうか」

「勿論ですとも」

散々に殴られ血を流しながらも、友は笑う。戻れぬ事を悟った二人は絶望へと歩み出す。考えが麻痺していたなんて、知らなかった。知らぬ振りをした。ふたりの胸は空っぽだ。



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