「例えば」私がこの男に心酔していたとして、この男が抱く理想を彼の為にと是が非でも己の身を削ってでも何をしてでも遂げようとして、そうして、作り上げた世界の果てに私は要るのだろうか。彼に必要とされている、という理由は求める答えとは違う。作り上げた、完成した世界に私自身要るのだろうかという話だ。私は彼の理想を成す為に奔走し続けたのだ。私の必要性は理想の「過程」にあり、既に完成された「結果」には無い。この男が理想の世界を完全な形で作り上げたその時私の目的は失われ、また私の必要性も無くなる。不要。内政外政、仮にこれらの政に私が必要であろうと、そのような問題ではないのだ。 理想。二文字を脳に刻んでここまで来た。 「ではどの様な問題だと言うのだ」 「あなたに心酔しているから、あなたの理想に焦がれているから。とどのつまり私はあなたとあなたの理想の為に身を削って奔走する私自身がいとおしいのです。けれどあなたの世界に、私は要らない」 「そんなお前がいとおしい」 「アースト」 「二人で世界を作ろうか」 「二人の世界を作ろうか」 111201 title by ポケットに拳銃 |