熱を与えているのか与えられているのか、はたまた分け合っているのかよく分からない。そんな感覚によく似たものを、俺は知っている。そいつは何もかもを喜んだ。俺が施す物なら何でも。与える物が何であれ男は犬が尾を振り飛び跳ねるように喜んだ。例えば視線。例えば口付け。例えば罵声。男は、諸葛誕はどのような視線であっても俺に見つめられれば喜んだ。口内に流し込まれた唾液ですら喜んで飲み下した。暇潰しに差し出した足にすら喜んで舌を這わせた。
どうしようもなく気持ち悪い、のだけれど、それを可愛らしいと思える自分が居る事に気付いた。嫌悪。諸葛誕は地面に吐いた唾でさえ俺のものだからと舌で掬う。この、気持ち悪さ。どうしようもなかった、どうすることもできなかった。違う、どうもしなかった。だって本人はそれを望んでいるし、俺だって――気持ち悪い事を嗚呼愉悦だ快楽だと受け入れるどころか自ら望んでいる。意味が分からない。分からないからやめられない。快楽を知った人間は貪欲になると、亡き父に教わったじゃないか――だってにやけが止まらない。だって欲しいじゃないか。こんなに可愛らしくていとおしいと思える男は今まで居なかった。俺はこいつが堪らなく欲しいんだ。そして与えてやりたい。俺をすべて。尾を振って飛び跳ねる姿が容易に想像できる。にやけだけでは足りない。笑い出す。

「先程から何が面白いのですか」

「お前が堪らなく愛しいんだ」

狗が嬉しそうに口角を上げ、鋭い犬歯を見せた。
…嗚呼、愉悦。



111204


title by 愛執


海山さんへ捧げる誕プレ
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -