泣かせてしまった。両手で顔を覆い小刻みに肩を震わせている司馬昭殿を見詰める私の表情には、きっと驚愕の色が刻まれていることだろう。息を吐く音が指の隙間から漏れて私の耳に届く。泣かせてしまった。彼を泣かせてしまった。何故。机上の書簡に目を通すどころか広げようともしない普段通りの態度を叱っただけではないか。まるで子供のように顔を隠し、涙を流しているであろう彼を凝視しながら考えた。司馬昭殿が泣く原因は彼を咎めた事にあったのか。ならば普段はどうなる。意味が分からない。貴方は何故こうも私を困らせるのか。

「…司馬昭殿」

期待していなかったが、やはり返事は無かった。
いつしか胸の内には焦りと不安が渦巻いていた。どうすれば良い。彼は泣き続けている。



「…諸葛誕」

彼が言葉を発したのは、私が名を呼んで少しした後だった。声を震わせて私の名を呼ぶこの男は一体何を考えている。何が原因で泣く。渦巻く感情を抑えながら、言ってしまったら更に泣かせるだろうかと不安を抱きながら「何か失礼な事を言いましたか」と声を掛けた。
これまでずっと顔を覆っていた両の手がゆっくりと離れていく。





「ばーか」

肩を小刻みに震わせながら私に目もくれずふははははははと笑う、



111023


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