「壱丸」

お前は本当にがさつな奴だなあ。いきなり襖を開けられたと思いきや同時に飛び込む声。しっかり整えた事など無いであろうぼさぼさの髪を鬱陶しげに掻き上げながら無遠慮に他人の領域に侵入する。此処、俺の部屋。でも駄目、弐虎。いけないそこは、

「居るなら返事くらいしやがれ」

お前、どうして分からないの。俺がどれだけ、

「おいこら壱丸、間抜け面してんじゃねえぞ」

弐虎、お前馬鹿だ。勝手に領域に入ってきて、お前本当馬鹿。俺の気も知らないで。

「ごめん、考え事してたんだ」

出し掛けた右手を無理矢理引っ込めた。まだ手を出す訳にはいかない。がさつで鈍いこの男を自分に傾倒させるまでは、我慢して。相棒を、演じて。

「何か用?弐虎」



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