「ただじゃ置かねえ」 「とか言って、疲れてるクセに」 「意味わかんね、死ねよ」 女みたいに自分の毛先弄って枝毛見付けたらそれを更に弄って。それでもこいつはどう見ても女では無い。口を開けば相手の神経を逆撫でする様な言葉ばかり吐く。嫌いな種類の人間だ。 後頭部を預けている畳から井草の柔らかな匂いが微かにして、けれどそんな事を暢気に考えていられる程の余裕なんて無かった。 「反撃する?」 「するさ」 「後から泣き見ても知ンねーっスから」 だからもうお前、何でも良いから早く其処から退いてくれねえかな。馬鹿の一つ覚えの様に頭を巡る。どんな時でも服部半蔵と言う男は自分の調子を狂わせる。それが腹立たしく、また己を敗北に追いやる原因でもあった。俺はこの男にたった一人だけで、しかも決定的と言って良い程の勝利を収めた事が一度も無い。そんな戯言は俺とこいつが敵同士と言う現実の前では全く通用しない音に成り下がる訳だが。今だけは別に、なんて訳じゃあ無いが。鋭い眼光を見た途端に何だかどうでも良く思えた。 「あ、それ。好き」 「、は?」 「瞬間、の、君のかお」 やっぱり退け、それかくたばれ。 110307 title by 誰花 |