現代





無断旅行はそうも上手く行かない。けれど二人なら何処へだって行けるような気がした。



「アナ」

彼は何時だって強かった。強く在ろうとした。誰にも告げず二人きりで旅行に行こうだなんて言い出したのはどちらだったか。他愛無い会話からそれに至った気もするし、どちらかの強い意志がそうさせた気もする。

「大丈夫よ」

夕陽が眩しい。軽い気持ちで家を出た訳では無い。自分達の里親はさぞ心配している事だろう。携帯電話の電源は始めから切っておいたから連絡が入っているかどうかも分からない。それでも離れてみたかった。明確な理由なんて見付からないけれど。

「少し休むか?」

気が付けば抜かされていた背。多少幼さが残るものの、その顔付きはれっきとした青年で。昨日までは自分を追うだけの弟の様な存在だと思っていたのに。時の流れは簡単に人を変えてしまう。何の躊躇も無く手を差し出す才蔵が少しだけ遠く見えた。

「才蔵」

「ん」

「帰りたい」

「ああ、帰ろう」



110218


title by hmr
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