どうして俺が上半身剥き出しで布団に俯せていて、どうしてこいつが俺の背中の古傷に口付けを施しているのか。根本を考える前に鳥肌が立ったから止めた。

「…おい」

「何」

「何でこんな事になってんだ」

確か、珍しくこいつと手合わせするとかそんな話をしていて。一刻打ち合って汗かいたから水浴びるっつう話になって。其処から何がどう転んでこうなったのか、今に至る。

「ちょ、」

問い掛けに答えずべろり。古傷を舐め上げられ流石の俺も身を起こそうとする。何か面倒臭え事になってきやがった。

「てめ、何す」

「したい」

嗚呼もう面倒事一直線じゃねえか。



意外と癖が少ない茶髪が垂れる項から下、これまた意外と広かった背中を視界に入れる。肩胛骨の近く、無数に在る獣が付けたとは到底思えない爪痕。心当りがある。

「あー…」

舐めてえな畜生。佐助。名を呼んで請う。が、直ぐに却下された。代わりに押し付けられた上体。選択肢は一つらしい。仕方無く奴の背中に腕を回し、せめてもの報復にと爪を立ててやった。



110211
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