現代





これで何度目になるだろうか。先程からソファと窓の間を行ったり来たりしている。意識的な行動だったがそれでも結果が出る訳ではなく、ただ時間だけが過ぎていく。

「昭、諦めろ」

再び窓の前に立ち灰色の雲を睨み付けていた俺の背中に声が掛けられた。俺は振り返らない。

「だって」

これじゃあまるで駄々を捏ねる子供だ。自分が一番分かってる。この歳になって意地を張るだなんて本当にガキ臭い。
雨降れよ。心の中でそれだけを繰り返していた。降れ。早く。窓から頑として離れようとしない俺を見兼ねたのか、ソファに腰を掛けていた兄が立ち上がった。その時。

「…あ」

聞こえたのは静かな雨音。窓の向こうの世界は水浸しになっていた。ガラスに映った顔に浮かべられるのは、満面の笑み。勢いよく振り返ると兄が携帯電話を取り出して誰かと通話を始めていた。ますます笑みが深くなる。
パタン。携帯を閉じた兄は苦笑いしながら近付いて来た。意図は分かってる。

「出掛けるのは中止になった。今日はずっと、家に居る」

おいで、と小さく広げられた腕の中に潜り込んで華奢な体を抱き締めた。本当、ガキ臭い。



110616


title by 誰花
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