浮気表現有り・ちょっとぬるい
苦手な方はご注意下さい





一度だけ、彼を無理矢理抱いたことがあった。怪訝そうな表情を浮かべる彼を床に押し倒したのだ。多分、罰を受けるのではないかと言う恐怖すら無かったと思う。彼には相手が居ると知りながら、…そうだな、その時の私は彼を寝取ろうと思ったらしい。才には絶対な自信があった。閨の手腕もなかなかだと思う。加えて容姿端麗、しかも標的とする主には男色の気があるそうだ。――試すしかないだろう。才を、端麗な面を、手腕を。

「っあ、……も、お前、…しつこい」

「…嫌がるのは口だけみたいですね」

存外、事は容易に進むものだ。
彼は簡単に私を受け入れた。拍子抜けしたが、それでも私はその腕の中に飛び込んだ。首筋にはご丁寧に痕を残してやった。口では暇潰しだ、などと言っていたが恐らくは違う。多分、飼い狗に見せ付けたかったのだろう。いつまでもお前の元に居ると思うのか。大間違いだ、と。我が主は面倒臭がり屋で気紛れで、そして計算高いひとだった。



「司馬昭殿、今宵は」

「空いてるぜ」

尋ねる度に返って来るのは承諾の言葉ばかりだ。前々からそれを疑問に思っていた私は、つい「本当に私で良いんですか」と呟いてしまった。他意は無い。単純に理由を知りたかっただけで。司馬昭殿。彼はどの様な答えを寄越すのだろう。

「だってお前のこと、好きだし」

さてどうしたものか。



110517


title by 女狼
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