半年前、告白した。玉砕だった。
半年後、告白した。二つ返事だった。
自分はたった今了承の返事を聞き、嘗ての晋王と付き合う事になった。何故だ。



「どっか寄って行かね?」

「所持金は」

「全額436円」

「さ、帰りましょう」

なんて微妙な額。決して多額ではなく、けれど極端に少ない訳でも無いからこれじゃあ何を買って良いのか分からない。繰り返されるブーイングを無視して下駄箱から靴を取り出す。

「ジュースでも買ったらどうですか」

「あ、それ名案。流石」

他愛の無い会話を繰り返し、また繰り返し。口を閉ざしても彼は私に話し掛ける。気だるそうに、だけれど。

「お前は?」

「は?」

「どれがいいの、って」

「どれでもいいです」

缶の列を指差しながら首を傾げる彼は小さな笑い声を漏らした後、ボタンを押した。ガコン、と音を立てて出て来た缶は緑。嗚呼、緑茶。シンプルなデザインのそれを拾い上げ、眼前に突き出される。彼はオレンジジュースの缶を既に開けていた。普通の学生の普通の下校風景。これが日常だ。この世界の。ジュースよりこっちの方が好きだろ、と口角を上げた彼は妙な所で気を遣う。矢張り彼は少しも変わっていなかった。

自分にこんな趣味はあっただろうか。同性を好きになるだなんて、英才教育を受けた完璧な人間である筈の「私」にとって有り得なかった事だ。どうして私は二度も告白したのだろう。何故彼だったのだろう。その彼に一度断られていたのに。

「――、――。…どうした?」

私のなまえ、を呼びながら此方を見る彼の目の中に映る私は、矢張り私だった。

「どうして返事、くれたんですか」

「何が?」

「したでしょう、告白。一度は断ったでしょう、」

「嗚呼、それ」

彼は見るからに軽そうだ。実際出会った時もこう、軽々しい態度だった事を覚えている。あの時程癪に障った(自分の中での)再会は無かった。あれが最初の再会だったのだけれど。

「一度目は対象に見れなかった。二度目は」
「場の雰囲気がそれっぽかったから」




唖然。こいつ馬鹿だ。何で告白したんだろうと言うか自分はこんな奴に好意を持ったのかこの鍾士季とあろう者が、いやもう鍾士季ではないが。

「そんな理由ですか、清々しくて逆に愉快です」

「いや、だって」
「断ったらお前、泣きそうな気がして」

妙な気遣いですね何だか貴方の事を無性に凡愚と呼びたくなってきた。それでも腹立たしい事に貴方への好意は剥ぎ取れない。同時に気付いた事がある。「私」は約千八百年も前から「彼」に焦がれていたのだ。



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