輪廻転生





私は彼の事を、正しくは彼等の事を覚えていた。だからこの世界で初めて彼を見た時もそれが「彼」だと分かったし、彼が「彼」でないことも分かっていた。彼は変わっていなかった。きっと、私も変わっていない。



「お。今から帰るのか?」

――司馬昭殿。危うく呼んでしまう所だった。これは彼の名前では無い。彼であるけれど、嘗て晋王と呼ばれた「彼」では無い。遠い昔に死んだのだ。私も、彼も。

まさか起こした乱が失敗するだなんて思いもしなかった。私を斬った配下の顔は忘れてしまった。息絶える直前迄その人間への怨みで一杯だったのに。けれど、思い出した所で何の役にも立たない。本来ならばある筈も無い記憶を思い起こしても意味が無いから。認めたくは無いが、所謂輪廻とか言う奴を巡って今、私と彼はこの世に生きている。無論、彼には当時の記憶など無い。

「ええ。先輩も、ですか」

「ま、そんな所」

何時もの様に成り行きで一緒に帰る。彼と出会ってから、既に半年の月日が経とうとしていた。



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