趙→馬要素有り





幾ら憎悪を口にした所で真の外道に堕ちる訳も無し。そもそも彼は人が呼ぶそれに対しあまりに潔い性分だったのだ。故に底まで落ちても意図せずに輝く様は美しい。将とは誉れ高き生き物、とはよく言った物で、しかし当人達は改めてその様に己の有り様を見詰めた事は無い。所属している軍、或いは志を共にする者に付き従い、天下への勝利に貢献する。最早戦は茶飯事であり、親が子を残し死んでいく事も常であった。詰まりは彼に降りかかった惨事の報もまた常であり、では何故そこまで仇討ちに拘るのかと問われればそれは彼自身の意地の問題であるのだから自分に分かる筈も無いのだと淡々とした返答をするのもやはり見当が付いているのではないか。あなたがいとおしいと口にしてみても信じるか否かは彼の自由だ。本気の仇討ちなのだと彼が叫んだ所で聞き入れるか否か判断するのもまた彼の仇の自由なのだ。彼は覇を唱える軍勢と対する度に荒々しく吼えた。私は今日もそんな彼を見ている。己の行動の哀しさにいつかは気が付くであろう彼の姿を期待しながら。



110319


title by 女狼
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