床に落ちると思ってぎゅっと目を閉じて身構えたものの、ぽすんと何かに当たったような気がしただけで、意外にも痛みは全くなかった。ふうん、床に落ちるって案外普通なんだなぁ…。
でも落ちたと思ったときにガシャーンと大きな音が聞こえたから、貯金箱は割れたらしい。私が丈夫だっただけ?
そういえば前の方に何かぬくもりを感じるけど何だろう。そう思って恐る恐る目を開けてみる。

目の前にあったのは、なんだか見たことのあるようなワイシャツ。その上の方には喉仏のよく目立つ細い首があって、さらにその上にあったのは…社長の顔だった(!)
尻餅をついた社長の上に私がいて、私を受け止めようとしたらしい社長の腕が私の背中のあたりにまわっている。
あの守銭奴の社長が私を助けた…?



「全く…ドジもいい加減にするざんすよ」



意外すぎて、思わず社長の顔を見つめてしまった。すごく驚いた顔をしていたと思う。
すると社長は私を抱いたまま、呆れ顔でおでこをちょんと弾いた。社長はなんだか面白いものでも見るような顔をして私を見ている。



「その貯金箱は設楽焼きの上等なものざんす。給料から差っ引いておくからな」



そう言って私をそっと床に降ろすと、社長は部屋を出て行ってしまった。すぐに戻ってきて「ちゃんと掃除をしておくざんすよ」と言ったときの社長の顔は、もういつもの顔に戻っていた。



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -