「うう、いったーーー……くない?」



床に落ちると思ってぎゅっと目を閉じて身構えたものの、ぽすんと何かに当たったような気がしただけで、意外にも痛みは全くなかった。ふうん、床に落ちるって案外普通なんだなぁ…。
でも落ちたと思ったときにガシャーンと大きな音が聞こえたから、貯金箱は割れたらしい。私が丈夫だっただけ?
そういえば前の方に何かぬくもりを感じるけど何だろう。そう思って恐る恐る目を開けてみる。

目の前にあったのは、なんだか見たことのあるようなワイシャツ。その上の方には喉仏のよく目立つ細い首があって、さらにその上にあったのは…社長の顔だった(!)
尻餅をついた社長の上に私がいて、私を受け止めようとしたらしい社長の腕が私の背中のあたりにまわっている。
あの守銭奴の社長が私を助けた…?

私は驚いた顔をしていたと思うけど、社長も負けないぐらい驚いた顔をしていて、やたらとうるさい自分の心臓の音以外は何も耳に入らなかった。



「あの…社長、お、降ろしてください…」

「えっ…?あ、あぁ…」



やっとの思いで声を絞り出すと、社長もはっと気がついたように腕を離した。
なんだか気まずい雰囲気の中、九官鳥の金田君が「名前、名前」とわたしの名前を連呼する声だけがのんきに響き渡っている。

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テーマ「人外ファンタジー」
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