私の頭がゴツンと鈍い音を立てて床に着いたとき、はるか上空には社長の大きな手があった。その手には、ネコが行儀よく座っているようだ。 「危ないところだったざんすっ…!もっと気をつけるざんす!」 「じゃ、じゃあ私を助けてくださいよ〜」 「あ…?何寝ぼけたことを言っている…?」 私のことをちらっと一瞥しただけで、手の上の貯金箱を確認するようにまじまじと観察する社長を見て、私は悟った。「危ないところ」だったのは貯金箱だったのだ、と。 「いつまでそこに寝てるざんす、邪魔ざんすよ」 洗濯が終わったみたいざんす、と付け加えて、社長は大事そうに貯金箱を抱えて出て行った。 今日は天気がいいからお庭に干そう…。痛む頭を抱えながら、よいしょと立ち上がる。目頭が熱いのはなんでだろう……。 |