兄妹の話 | ナノ




実の妹の部屋は何というかもっと、明るい色彩を主としているのではないかとイメージしていたのだ。
例えば橙色だとか。
あのエネルギーの漲る、明るく元気な色は妹にピッタリだ。それに橙色というのは心の寛大さをも表すというらしい。度量が大きく人を無闇に責めることをせぬさま、妹は兄である俺より実に寛大ではないか。

そう、だから、そういう暖色系の色が好きなのかと思っていた。事実、妹の身の回りのものは暖色系のものの方が圧倒的に多い。一緒に暮らしているわけでなくとも、サッカー部の部員、マネージャーとして練習やら合宿で何かと顔を合わせることができる為すぐにわかる。
オレンジ色のシャープペンシル、オレンジ色のペンケース、オレンジ色のハンカチ。

落ち着いた部屋だななんて妹に言ってみたら私だってもう高校生よと返された。ああ、そうだ、妹ももう高校生になるのか。あんなに小さくて母や父を憎むやもしれぬと心配した妹はいつの間にかあんなに大人になっていた。俺よりずっと大人かもしれない。サッカーばかりやっていた俺と違って妹に見えている世界はきっと光にみちあふれているのだろう。
もしかしてこの部屋の色もアイツのことを意識してのことかもしれない。そうだ、アイツの髪の色はこんな深い藍色をしていた。

「どうしたの」
「嬉しいんだ」

考えこんでいたのだろうか心配した妹の問いかけにそう答えると嘘吐かないでよ、なんて。嘘じゃないさ。そりゃあお前の言うとおり寂しいけれど、それ以上に嬉しいんだ。

「春奈も女性なんだな。」

言ってしまってから失礼だなと思った。もしかして怒られるかとも。だけれど、妹は怒るでもなく失礼ねと外方を向くわけでもなく黙りこむから、やっぱり大人になったんだなと思う。

母さん、父さん、俺達兄妹が見えていますか。
母さん、春奈は随分と母さんに似てきました。母さんに似た綺麗な女性になりました。
父さん、俺は父さんのようになれるでしょうか。





兄妹の話






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テーマ「人外ファンタジー」
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