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(閻魔と鬼男)




美しい色をしている。透き通っている、というか。艶がある、というか。鬼の毛というのは皆そうなのだろうか。否、そんなことはない。今まで私が見てきた鬼の中で、彼の毛ほど美しいものはなかった。だから少々惜しい気もする。もう少し手入れでもすれば更に良くなるだろうに。例えば香油を使うだとか、例えば櫛をいれるだとか。

そんな私の思考をまったく知らない彼、鬼男くんは真面目に書類の整理を行っている。書類をめくる褐色の肌もまた美しい。前に一度これは口にしたことがあったのだけれど、鬼男くんは小さく笑って「大王の白い肌の方が雪のように美しい」と彼に似合わぬ詩的な言葉を返した。それで私はがらにもなく照れてしまってそれにつられて鬼男くんも照れてしまったのだが、褐色の肌が更に赤くなったのは、とても良い眺めだった。食べてしまいたいと思った。そう、下界にある赤い果物のように、甘酸っぱいのだろうと思えたのだ。

「さっきから、人の顔をじろじろと。なんです?」
「あ、うん。なんでもないよ。」

訝しげな表情をする鬼男くんの瞳が私を見据える。下界には宝石と呼ばれる輝く石があるらしい。実際に近くで見たことはないけれど、多分鬼男くんの瞳みたいなものなのだろう。こんなにも、美しいのだから。


「鬼男くん」
「なんですか」

どうにも今日は我慢が出来ない日らしい。私は無意識の内に立ち上がり彼の服を引っ張ってその赤い唇を奪っていた。キスの時位瞳を瞼で隠してしまったって構わないのに、鬼男くんは瞳を見開いたまんまだ。かさついた唇に噛み付くようにして何度も口付けたところで漸く鬼男くんは我に帰ったのか私の胸を押して距離をおいた。

「な、なにすんだ、この変態大王イカ…!」
「俺さ、キスしたい気分だったんだよね。」

鬼男くんの顔がどんどん熱を持っていく。触れてなくともわかるのは、褐色の彼の肌がどんどん赤みを増していくからだ。
なんというか鬼にしておくには勿体ない位可愛らしい。
この可愛らしさが私の大のお気に入りで、嗚呼もう食べてしまいたい。
もう一回。
今度唇に口付けたら噛み付かれてしまいそうだから、私にしては我慢をして、鬼男くんの頬に唇を触れさせる。ちゅと可愛らしくリップ音までつけてやると、鬼男くんは耳まで真っ赤に染めるものだから、美しい銀髪も赤く染まってしまうのかもしれない、なんてそう思った。










私の可愛い子
(何処から食べてしまおうか)










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