小説 | ナノ





(太子と妹子)


学パロ




吐く息はまだ白い。今年に入って2ヶ月以上経つけれど、春の暖かさはまだやってこない。けれど時は着々と進んでいるわけで。つまりは私の卒業も近いわけで。それは隣を歩く妹子とこうして毎日会えなくなることを示しているわけで。そんな妹子の赤い鼻が可愛らしいだなんて近くで考えることが出来なくなることが近いというわけで。考えるとややこしいけれどまとめるとつまり。別れが近い。とはいえ、永遠の別れってわけではないのだから淋しがる必要はないはずだ。会おうと思えば会える。家だって特別近いわけでもないかわりに遠いわけでもない。少しだけ、会える時間が減る。それだけのことだ。それでも。私は泣くのだろう。生徒会前会長としてしっかり挨拶が出来るのだろうか。泣きながら挨拶したら、きっと妹子は酷い顔です、見れたもんじゃありません、なんて言いながらも泣いてくれるんじゃあないかと思う。それを想像したら頬が緩んでいたらしい。妹子が訝しげな瞳を向けてきた。
「何にやけてんですか。」
「もとからこういう顔だ。」
「通りで気持ちが悪いと思いました。」
「そこまで言うか!」
「良く言えば気持ちが悪いんですよ。」
「悪く言えば…?」
「聞きたいですか?」
「この毒妹子!」
2人で笑う。このやりとり。このやりとりが楽しくてたまらない。テンポの良さだとか、笑うタイミングが2人して同じだった時、だとか。ほんの少し。ほんの少しだけ、妹子を抱き締めたくなった。けれどそれは我慢する。流石に蹴りやら殴りでは済まない。あと数日しかこうして一緒に帰れないのに口をきいてもらえなくなったら心が折れるどころじゃすまない。それに妹子は意地っ張りだから絶対に最後まで私と目も合わせようとしないだろう。結果後悔もしてくれる。あるいは、泣いてくれるかもしれない、というのは少しだけ私の願望が入った見解かもしれないけれど。
辺りに人はいない。ゆっくりと妹子の手へ手を伸ばす。とんと手が当たって、それからどちらともなく指を絡めた。まるで竹中さんから借りた恋愛小説みたいだ。妹子は目を合わせようとしてくれないけれど、これは後悔するとかしないとかの類じゃない。単純な照れだろう。妹子の鼻は赤い。頬だって赤い。耳だって赤い。それは寒さのせい?問い掛けたら手が離れてしまいそうだから口にはしない。かわりに頬が緩んだらしい。
「だから気持ち悪い顔しないでくださいよ、太子。」
「私はイケメンだぞ!」
卒業してもこの手の温かさを忘れずにいれれば良いと思う。妹子も。私も。それでもきっと寂しくて、会いに行く日もあるのだろうけれど、それは仕方ない。だって私は妹子が、妹子が大好きなのだから。







*← →#

back




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -