ついに…ついにこの日が来てしまった。5月21日、真田の誕生日。ついにやって来てしまった…!昨日、学校が終わった帰りに柳とジャコと柳生と幸村(幸村は本来呼んでない。むしろ来て欲しくなかったのにどこからか聞き付け無理やり参加してきた。まぁ、おかげて部活がテニス部が休みになって皆の時間が早く空いたので助かったけど)に付き合ってもらって散々悩んだ結果、タオルとテニスボールにした。タオルは爽やかな水色に白のラインが入ったシンプルなデザインで、汗をしっかり吸ってくれる生地の物を選んだ。テニスボールは筒状の容器にテニスボールが4個程入ったいわゆるお店で良く見かける物だ。プレゼントは家で一応、派手すぎにならないようにラッピングをして今はロッカーの中にある。昨日、相談に乗ってくれた皆には本当に感謝してる。酷い事を言ってしまった丸井や仁王にもだ。後で謝っておこう。それに一緒に買い物に付き合ってくれた4人には今度何か奢ろう。ジュースとか。ただ、問題はプレゼントを渡す時に真田に告白するという事だ。


私はずっと真田の事が好きだったのにも関わらず、いざ真田と会話すると緊張と恥ずかしさのあまり憎まれ口を叩いてしまう。そして真田もその憎まれ口を買ってしまい、いつも軽く口喧嘩になる。私は気の強さが邪魔をして、一度言ってしまった手前、素直になれずいつしか喧嘩友達の様な関係が続いてしまった。仲は良いとは思うけど、本当は喧嘩友達なんかじゃなく普通に話したかった。その機会が今日なのだ。喧嘩友達じゃなく、一人の女の子として、真田の誕生日を祝うのだ。今更真田が私を女の子として見てくれるかは不明だけど。


『今更何て言ったらいいのよ…』


正直、告白と言っても何を言ったら良いのか、昨日家に帰ってからずっと考えていたけど何にも思いつかなかった。今日の授業もその事で頭がいっぱいで手に付かなかくて、珍しく授業でヘマをして幸村に笑われた。私がどれだけ悩んでも考えても時間は待ってくれなくて、あっという間に放課後になってしまった。一応、真田には部活が終わって部室で真田と誕生会をした後に、部室で少し残ってもらう様に幸村にお願いしてある。さて、これ以上は真田を待たせてしまうし、もう後戻りは出来ない。行くしか、ない。


「む、どうしてみょうじが此処に来る?皆はもう先に帰ったぞ」
『…あんたに用があるから来たのよ』
「俺にか?まさかとは思うがお前も俺の誕生日を祝ってくれるのか?」
『そうだけど。テニス部でやる誕生会は私部外者だし、邪魔になるから。幸村にその後残ってもらう様にお願いしたの』
「何だ、来たら良かったでは無いか。何も気を使う事も無かろう」
『良いのよ』


部室のドアを開くと制服に着替えた真田が窓際の椅子に座っていて、私を見て驚いた様に目を見開いた。私は意を決して持ってきたプレゼントを真田の目の前に出した。真田はこれまた律儀に「有り難う」と言ってゆっくり袋を開けた。真田は気に入ってくれるだろうか?いくら皆のお墨付きをもらってもやっぱり不安は消えなくて真田の反応を見るのが怖くて私は腕をつき出した状態で目を瞑ったまましばらく動く事が出来なかった。しばらくするとがさごそ鳴っていた袋の音が止んで、沈黙が訪れて私は怖々と目を開くと、少しだけだけど真田が微笑んでいる様だった。良かった、気に入ってもらえたみたいだ。


「わざわざ贈り物まですまない。このタオルとテニスボール、有り難く使わせて貰う」
『う、うん』
「では、もう帰ろう。直に日が沈む。送って行こう」


そう言って椅子から腰を上げ、荷物を取ろうと立ち上がった真田の腕を掴んだ。真田はまた目を見開いて「何だ」と椅子に座り直してくれた。私はまだ、大事な事を伝えていない。きちんと伝えなくては。


『待って、真田。まだ、言いたい事がある』
「何だ。言ってみろ」
『あの、その、私…』
「いつもと違うな、みょうじ。落ち着け、ゆっくりでいい。どうした?」
『私は、私は…真田、が、好き』


言ってしまった。ついに。今まで恥ずかしくて素直になれずずっと言えなかった事を。真田は今どんな顔をしているだろう。今までずっと喧嘩友達としか思っていなかった女子にいきなり告白されて驚いているだろうか。それとも全国三連覇が掛かった大事な年に迷惑だと思っているだろうか。私のこの告白は真田の負担にはなっていないだろうか。色々考えていたらなんだか涙が溢れてきたけど下を向いて必死に堪えだ。真田は黙ったまま何も言わない。やっぱり、私のこの気持ちは…。顔を上げると真田は片手で口を押さえて何やら考えている様だった。


「………」
『………』
「…みょうじ」
『はい』
「お前からそんな事を言われるとは思ってもみなかった。俺とお前はその、只の喧嘩友達だと…」
『うん…ごめん』
「いや、そういう意味ではない!お前にとって俺は只の喧嘩友達としか思われていないと思っていた」
『え?』
「だから、その、俺もお前を好いていたという事だ…」


真田はしどろもどろに顔を少し顔を赤くしながら真っ直ぐ私の目を見てそう言ってくれた。私は思わず真田に飛び付いて力いっぱい抱き締めたら今度は顔を真っ赤にしてお得意のたるんどる!が飛んできたけど気にしない。真田も抱き締め返してはくれなかったけど、背中をぽんぽんと軽く叩いてくれた。これからはもうくだらない意地は張らない。真田に好きだって伝えるし態度にも出そう。きっと幸村たちが言ってくれなきゃ今日、気持ちを伝える事はなかっただろう。悔しいけど、幸村に感謝してもしきれない。やっと真田に気持ちを伝えられて一番望んでた形になったのだ。そして私たちはいつもより近い距離で一緒に帰り、また明日と言い合った。


『真田!』
「何だ」
『誕生日おめでとう!』


*お誕生日おめでとう真田!!
(20130521)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -