「ねぇねぇ、柳君。柳君はどんな女の子が好き?」
「ふむ、好きな女性のタイプか…そうだな、俺は計算高い女が好きだな」
「計算高い…?なんだか変わった好みねぇ。難しいわ」
「そうだろうか?」
『………』

終わった。完全に終わった。何が終わったってそりゃ私の恋がですよ。さよなら私の初恋…。クラスの女の子が"男性の好み"という話題で盛り上がって、たまたま彼女たちの近くの自分の席で読書をしていた柳君にこの話題が振られた。私も自分の席が彼女たちの近くなので初めは"女の子ってこの手の話題好きだなぁ"くらいで聞き流していたんだけど、柳君に振られて彼女たちにも柳君にも気付かれないように聞き耳を立てていたらさっきの発言である。

『終わった…』

計算高い女の子…それは私という人間とは天と地ほどにかけはなれていると自分でも思う。だいたい、計算高いってどんな子の事を言うんだろう。性格の裏表があっても上手く隠して皆に愛され世渡り上手、とか?男性の扱いが上手い、とか?あ、あれかな?頭の回転が早いとかそんなかな。…何一つ自分に当てはまっていなくて自分で自分に失望した。私は人見知りが激しくてお世辞にも世渡り上手なんて言えないし、人見知りのせいでまともに男の子とも話せない。ましてやすぐにおどおどしてしまってドジを踏んでしまうので皆に迷惑をかけてしまう。うぅ、とことん柳君の好みにから遠ざかってるよ…。ダメダメだ。

『(まず私なんかが柳君を好きになること事態おこがましい事なのに…)』
「…ただ、あくまでもそれは理想であって必ずしも現実でそうとは限らないがな。なぁみょうじ?」
『!?』

会話が終了し、彼女たちが教室から出ていって再び一人になった柳君を机に突っ伏した状態で腕の間から見ながら誰にもバレないように悲しみに打ちひしがれていると、いきなり柳君に名前を呼ばれ、柳君が私の方に振り向いた。驚きのあまり勢いよく頭を上げて柳君を見ると、柳君が少し意地悪そうに笑った。私は話を盗み聞きしていたのがバレてしまっていた事、普段あまり会話をした事の無い柳君とたった今会話をしている事、何より整った顔でこちらを見つめる柳君に恥ずかしくなってしまい、私はただ、"えっ"とか"あの…"とかしか言えなかった。

「そんなに俺の好みと自分が掛け離れていることがショックか?みょうじ」
『えっ、な、ちがっ…!』
「ほう、なら何故俺が先程彼女達に話掛けられた時、探るように聞き耳を立てていた?」
『あっ、はう…』
「それは俺の好みが知りたかったんだろう、違うか?」

どうしようすごく恥ずかしい!柳君の好みを知りたかったのを知られたということは私が柳君の事を好きな事も知られてしまったということで、でも、柳君はほとんど話した事もない私に好きになられてきっと迷惑している。ここは嘘だとバレていても違うと言い切らなくちゃ。

『ち、「違うよ』と、お前は言う」
「嘘はいけないな、みょうじ。俺は確かに計算高い女が好みだ。だが、現在俺が好きな女子はみょうじ、お前だ」

そう言うと柳君が自分の席から立ち上がり、私の目の前にやって来て私の髪の毛を掬い、それはそれは優雅な手付きで柳君が私の髪の毛に口づけた。その瞬間、それを見ていたクラスの皆(主に女子)が叫んでいたけど、柳君は気に留めもしないようにまた意地悪そうに笑った。私の頭の中はすでにキャパオーバーでパンク寸前でただただ、魚のように口をぱくぱくしながら柳君を見つめる事しかできなかった。

「言っただろう、理想と現実とは違うと」

*某恋愛ゲームであーんした柳さんならこれくらいの事は平然とやってのけるはず。
(20130416)
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