いつも一氏に必要とされるのは私ではなく、小春くんだ。普段、仲良くしていても最後に選らばれるのは小春くんで、私はきっと一氏の視界にすら入っていないだろう。私もなんでこんな奴を好きになったのかと自分で自分が憎いけれども、あれは1年の頃、まだ、私は、大阪に引っ越して来たばかりでまわりに馴染めず、クラスで孤立し、ほんとに辛くて、学校に行くのも嫌だった時に、一氏だけはぶっきらぼうな態度ではあったけど、私と距離を置かず接してくれた。そして、事態が悪化して半ばいじめのような事が起きたある日、クラスメイトに反抗できずただただ泣いている事しかできなかった私を一氏は助けてくれた。私は、その日から一氏が好きになった。最初は助けてくれた一氏へのヒーローに対する憧れのようなものを恋と錯覚していた気もするけど、一氏と仲良くしていくうちにどんどん一氏が好きになった。でも、一氏の一番は小春くんで、私はただの友人。小春くんは、私が一氏の事を好きだと知っているから、いつもごめんねと謝ってくる。小春くんが悪いわけじゃないのに。優しい小春くん。でも私は、そんな優しい彼を、一氏に大事にされる小春くんに、嫉妬してしまってる。最低だ。


『小春くんなんていなくなっちゃえばいいのに』
「あ"ぁ?なんやとみょうじ!お前っ!」
「止めてユウくん!なまえちゃん責めんといてっ!」
『小春くんなんていなくなっちゃえばいいのにっ!!』


言ってはいけない事を口にした。一氏にとって小春くんを悪く言われる事が一番腹立たしい言葉なのに、私は、怒りに任せて最低な言葉を吐いた。でも、もう、私になんて目もくれず、小春くんだけ一途に想う一氏を見ることなんてできない。耐えられない。なんて自分勝手なんだろうと心底思った。私は、その場から逃げ出すように教室から走り去った。小春くんの制止の声も聞かず、逃げた。その時、一氏がどんな顔をしていたかは分からない。でも、大好きな小春くんを傷付けた私に、軽蔑の眼差しを向けていた事だろう。きっと、明日からは口も聞いてもらえない。でも、これで良かったのかも知れない。これで一氏を諦める口実ができたのだ。あとで小春くんには謝っておこう。許してもらえるか分からないけど。一氏は謝っても許してくれないだろう。明日からはきっと、敵を見るような目で私を見るだろう。いなくなっちゃえばいいのは小春くんじゃなくて私なのに。さっき、口にした言葉は、きっと、小春くんだけじゃなく、一氏も、私も、私の一氏に対する気持ちも否定する言葉だったんだ。


『私ごと、こんな気持ち、無くなっちゃえばいいのに』

(20130625)
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