『ねえ日吉くん!笑って!』
「……はぁ?」

みょうじなまえは朝、教室に入ってくるなり勢い良く俺の目の前に表れ、馬鹿みたいに大きな声でそう言った。別にこいつとは特別仲が良い訳では無いし、寧ろ同じクラスになってから今まで数回しか話した事が無い。こいつの事はクラスの変人、くらいの認識しか無い。俺がいきなり意味不明な事を言われてしばらくこいつの言った事を理解出来かねて黙ってみょうじの事を見ていると、『ちょっと睨まないでよー』と口を尖らせた。睨んでねぇよ。

「お前の言ってる意味が解らなくて困ってたんだよ。ちゃんと日本語を喋れよ」
『うっわ!いきなり辛辣!日吉くんクラスメイトに冷たすぎ!』
「俺は馴れ合いは嫌いなんだよ。冗談なら他でやれ。俺はお前の暇潰しに付き合ってやるほど暇じゃない」
『馴れ合いじゃねぇよ。そんなんだから友達できないんだよ。そんなつんけんしないでもっと笑ってみ?せっかく顔整ってんだし、面白い性格してんだからさ』

全く、大きなお世話としか言いようがない。俺がクラスに友達作ろうが作るまいが俺の勝手でなんでこいつにそんな事言われなくちゃいけないんだ。みょうじのこの一言で俺はかなりイラついたから今度は本気で睨んでやったけどみょうじは全然怯える事もなく『おーこわっ』とかほざいてやがる。女子なら大抵これで怯えてどっか行くんだがこいつは違うらしい。

「お前にそんな事言われる筋合いなんかねぇだろうが」
『あるよ。私、あんたと友達になりたいもん』
「あぁ?お前が俺と友達?」
『うん。この間、日吉くんが部活やってるとこ見たよ。あんた、教室では喋りもしないのに、部活やってる時すごい良い顔して笑うんだね。それで興味を持った』
「………」
『だから、私と友達になりましょう!日吉若くん!』

なんか言ってる事が意味不明過ぎてもう呆れるというよりは笑える。物好き、ってこういう奴の事を言うんだろうなと考えていたらみょうじがすっと俺の目の前に手を差し出し頭を下げ、『私とお友達を前提にお付き合いしてください!』と大声で叫んだ。端からみりゃみょうじが俺に告白しているように見えたようでクラスの奴らが何事かとこちらを見ている。当の本人は何故自分達が好奇の目に晒されているのか解っていないようで周りをきょろきょろしていた。

『えっ?えっ?なんか私、変なこと言った?』
「今お前は大いに誤解を受けてると思うぞ」
『うそうそうそ!なんの誤解?えっ?えっ?』
「…っ、はは」

こいつの間抜け面見てたら声に出して笑ってしまった。はっと我に帰って笑ったのを誤魔化すように咳払いをすると、みょうじは一瞬驚いた顔をしてすぐ『よくわかんないけど、日吉くんが笑ってくれたからいいや』なんてまた馬鹿みたいな顔して笑った。

『お返事をお聞かせ願いたい!』

もう一度さっきのように俺に手を差し出し頭を下げたみょうじに俺はふん、と鼻で笑って目の前に出された手をぺしりと払ってこう言ってやった。

「俺もお前に興味が出た」

*ちょっと意味がわかんなくなっちゃった
(20134013)
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テーマ「人外ファンタジー」
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