「馬鹿者!赤也、たるんどる!!」
「わわわ、副部長!…うっス!!」

どっかーん。なんかテニスコートの方で大きい声がしたと思ったらすぐにまたおっきな音がした。急いでテニスコートに向かってみると、何やら帽子を被った背の高い人がもじゃもじゃした頭の男子を平手打ちしたみたいだった。え、平手打ち…?いやいやいやいや!あれは平手打ちで出る音じゃなかったって!間違いなくなんか爆弾的なものが爆発したみたいな音したもん。てか、あんな音するくらい全力で平手打ちしたのかよテニス部こわー!!いくら三連覇掛かってるとはいえ、たかが中学の部活でそんな事すんの?やだまじでテニス部こわっ。てかあの帽子の人、風紀委員委員長の真田先輩?!うわ、あの人、朝いっつも校門のとこに立っててこわいんだよなー。挨拶とか、服装がなってないとめっちゃ怒られるし。前に、私の近くにいたギャルが止められて怒られてたけど、あのギャル子半泣きだったもんな。あれ、一瞬私かと思ってギャルが半泣きしてるとき恐怖で私は全泣きしてたわ。女にも容赦ないとかこわすぎでしょ。それに良くみればあのもじゃは赤也ではないか。あの凄まじい平手打ちを受けて泣かないなんて、赤也強い子!今度、ジュースおごってあげよう。いやぁ、同じ部活にあんな人がいるなんて赤也も可哀想だなぁ、くわばらくわばら。

「おい!お前、何をしている」
『へっ?!』
「お前以外に其処に誰が居るというのだ」

やだ!ここから二人まで結構遠いというのに、いきなり真田先輩が赤也から私に視線を逸らして声かけてきた!とりあえず周りをきょろきょろ見回してみたけど、うん。私しかいねぇ!これは完全に私に話しかけられてる!どどどどどどどどどうしよう、めっちゃこわいんですけど…。そうこうしてると真田先輩は赤也を連れてこっちにどんどん近づいてくる。途中、赤也が私に気付き「あ、みょうじ」とか言うもんだから真田先輩がそれに反応した。やだ、近くで見るとおっきくてめっちゃこわい!泣きそうです、真田先輩。

「む、赤也、知り合いか?」
「友達ッス。同じクラスのみょうじッス」
『ど、ども…』
「そうか。してみょうじ、お前はここで何をしている?」
『いや、な、何も…』

私がそう言うと真田先輩はすでに結構な数が刻まれている眉間に、更に皺の本数を増やした。も、もしかして私、テニス部をスパイしようとしてるとか思われてる?まぁ、私の今の状況は、さっきの爆音を確かめるために元いた裏庭から近道使ったから茂みの間に居るわけで、そう見えなくもないけど、それか、向こうの方でぎゃあぎゃあ言ってるミーハー女子の仲間だと思われている?!どちらにしても真田先輩のお怒りが飛んでくるのは時間の問題だ。早いとこ弁解してこの場を立ち去りたい。まじで真田先輩こわい!

「では何故お前はその様な所に居る」
『いや、さっきすっごい音がテニスコートの方からしたもんで…』
「すっごい音?」
『そしたら、先輩が赤也をぶん殴ってるとこで、あれが平手打ちの音なのかと驚いて、動けずにいた次第であります…』
「ぶっ!!」
「赤也!」
「はいッス!!すんません!」

赤也は私の言葉に思いっきり吹き出して笑ってまた真田先輩に怒られた。じゃあこれで失礼します、と去ろうと思ったけど、足が動かねぇ…!ほんと真田先輩こわい!めっちゃこわい!別に怒られてる訳ではないと思うけど威圧感が半端なくて何もしてないのに怒られてるみたいだよ。これが、漫画とかでいう、気に当てられるというやつですね、大自然でこのままだと食べられるのはわかっているのに、ライオンに狙われるも恐怖で動けずにいるカモシカの様な心理状態を今、私は、身をもって体感しているという訳ですね。助けてお母さん!やばい、ほんとに泣きそう。ここで泣いたら真田先輩も訳がわからず困るだろうに。しかも、あなたが恐くて泣きそうです、なんて言ったらそれこそ怒られる。でも、ほんとに、泣きそうです。

「そこまでだよ、真田。彼女の言ってる事は本当だ。そんなに威嚇してしまっては可哀想だよ」
「彼女がスパイでも、ミーハーでも無いのは俺達二人が保証しよう」

ほんとに泣く!ってときに後ろからジャージを肩に羽織ったとっても綺麗な人と、これまた背の高い目を瞑った人が助けてくれた。よかった、ほんとに泣くところだった。中2にして、人前で泣いてしまうとは、完全に赤也にバカにされるところであった。ほんとに助かった。先輩を呼び捨てって事はこの人たちも先輩なのかな?と思っていたら真田先輩がこほん、と咳払いをして私のヒーローに視線を移した。

「幸村…蓮二、別に威嚇など、していない」
「どこがだよ。思いっきりしてたじゃないか。ほら彼女、泣きそうだよ」
「俺達が入らなかったらあのまま泣いてしまっていた確率、96.8%」
「む…?そうなのか?」
『お恥ずかしながら、ほぼ泣く寸前でした』
「ほらね」
「ぶはっ!!」
「こら赤也、女子が弦一郎の威圧に耐えるのは相当の事だぞ。笑うのは失礼だ」
「まぁ、副部長はほんと無意識で威圧オーラ出ちゃいますからね。俺でもふうーに恐いッスもん。みょうじ、大丈夫だったか?」
『思いっきり笑われたあとに言われてもあんま嬉しくないんだけど』
「わりぃ、わりぃ」
「…みょうじ」
『はい』
「その、すまなかったな。怯えさせて」

真田先輩はほんの少ししゅんとした表情で申し訳なさそうに手を私の前に差し出してきた。こ、これは仲直りの握手的な?そういう感じですか?すっごいこわい人だと思ってたけど、案外こわくないかも。いや、やっぱりまだこわい!…でも、良い人だということはわかったのでそれでいい。私は、差し出された手を遠慮がちに握ったら、真田先輩にがっしり握り返されてまた驚いた。


*自分でもこの超展開についていけず、よくわからなくなってしまいました。すいません。
(20130601)
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