はぁ。春は曙、とは良く言ったもので、ほんと春は眠くて敵わん。でも授業はしっかり受けて家で復習したいから、眠っちゃわないように必死で起きてる。だけどそのせいか、学校が終わると一気に疲れがやって来て、放課後の教室で眠ってしまうことがしばしばあるのだ。夕方、温かい中にも吹く爽やかな風がなんとも気持ち良くて私は睡魔に勝てない。まぁ、勝つ気もないけど。そのうち誰か教室を閉めに来る人がいつも起こしてくれるし。

「おい、みょうじ…起きろ。みょうじ」
『ん〜あと30分くらい…』
「馬鹿者。早く起きんか」
『え〜無理だよ…って真田?!』
「…やっと起きたか」

ええええええ真田がなんでここに?!真田は部活じゃないの?しまったこんなところ見られたらお得意のたるんどる!!がくる!っと思って若干テンパったけど、当の真田は全然そんなことない感じていつもの仏頂面で立っていた。ちらりと時計を見るともう完全下校時刻があと15分と迫っていた。真田は鍵閉めて帰りたいのかな?

「全く、お前と言う奴がこんな所で眠ってしまうとはたるんどる」
『ごめんごめん、春はどうしても眠くなっちゃって。でも授業中寝ないだけマシでしょ?』
「まぁそれはそうだが。だが、女子が教室で一人眠るというのは感心せんな。余りにも無防備だ」
『心配してくれてるの真田?ありがとう』

真田は少し照れたように帽子を下げ、顔を見えないように隠してしまった。なんかこんな真田を見るなんて意外。同じクラスだけどあんまり話したことなかったし、いつもの怒ったみたいな顔してるイメージしかない真田が照れている。そう多くは知らないであろう真田の一面を垣間見て得した気分。にやにやしながら真田を見ていたらいつもの顔で睨まれた。

『真田も照れたりするんだねー』
「みょうじは俺をなんだと思っているのだ」
『空き地横のカミナリおじさん的ポジション』
「…みょうじ、それは俺に怒られたいということでいいか?」
『すいませんすいませんすいません』

私が全力で謝ると、真田はぷっ、と吹き出したあと、いつもの完全悪役のラスボスみたいな笑みじゃない、優しい顔で笑った。それを見た瞬間、私の胸はうるさいくらいに激しく打ち付け、その後一緒に鍵返して、校門まで歩いたけど、一度もまともに真田の顔を見れなかった。

「どうしたみょうじ、いきなり黙って」
『なな、なんでもないよ!うん!全然なんでもない!』

(20130509)


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