やぁ、俺は立海大附属中テニス部部長、幸村精市だよ。今日は俺達のテニス部について少し話をするよ。皆、俺は勿論、他のレギュラー陣については知っていると思う。今日はレギュラー陣についてではなく、俺達をいつも支えてくれる良きマネージャー、みょうじなまえについて話したいと思うんだ。彼女は、俺達が1年の頃からずっと一緒にマネージャーとしてこの立海大テニス部を支えてくれている。元々マネージャーは先輩方の代にもいたんだけど、先輩方の代が卒業して、俺達の代になった時、マネージャーは彼女一人になってしまった。けど、彼女はそれまでよりも頑張って、今では一人でマネージャー業をこなしている。何人かマネージャーとして入った子がいたけどマネージャーもかなりの重労働だから結局やめていってしまった。だから彼女には本当に感謝しているよ。彼女無しでは今の立海大テニス部はないからね。


おっと、そんな事を話したい訳じゃないんだ。本題は、そんないい子が何年間も献身的に支えてくれていたら誰だって好きになっちゃうよね、って事。レギュラーになれば彼女と関わる事も多くなるから尚更の事。俺は部長だからレギュラー全員の事を見ていないといけない。だから気付いたんだけど、うちのレギュラー陣、皆彼女の事好きなんだよね。何人か自分でも気付いてない奴がいるけど。皆、みょうじさんと少しでも話したくて仕方ないみたい。


「おーい、なまえー!ガム切らしちまったからちょっと部室から取って来てくれよぃ」
『はいよー!』
「すまねぇな、みょうじ、ブン太がパシリみたいな事させちまって」
『全然だよ、ジャッカル!ありがと!』


まず一人目は丸井。丸井は1年の時、彼女をマネージャーにとテニス部に連れてきた張本人。丸井に関してはもうその時点で彼女の事、好きだったんだよね。ずっとクラスも一緒だから一番中が良いのも丸井だ。


二人目はジャッカル。彼はブン太と仲がいいからその繋がりで彼女とも仲が良いみたい。良く手が空いた時にみょうじさんの手伝いをしてあげてる。でも、ブン太がジャッカルに彼女が好きな事を公言してるのかな?少し遠慮している感じがするよ。彼はとても優しいから損をしてしまうね。


『ほれ、ブン太!ガーム!』
「おっと、サンキュー!」
「なまえせんぱーい!俺も構ってくださいよー!」
「そうじゃそうじゃ。ブンちゃんたちばっかりずるいぜよ」
「こらこら、切原君、仁王君、なまえさんはお忙しいのですよ。休憩中だからといっていけませんよ」
『あはは、大丈夫だよ柳生くん。赤也も仁王も練習頑張ってたもんね』
「じ、じゃあ先輩!頭撫でてくださいっす!」
「赤也ずるいぜよ俺も俺も」
『お、おう?』


そう言われてみょうじさんは赤也と仁王の頭を撫でてあげていた。二人はレギュラー陣の中では比較的、好意を出す方だから撫でてもらって嬉しそうな顔をしていた。その二人を少し羨ましそうに見てる柳生。と言っても眼鏡の奥は見えないからあくまでもそう見えるってだけ。そんな二人から柳生に目を移したみょうじさんはハッと思い出したように柳生に駆け寄った。


『そうだ!さっき幸村と打ち合いしてたときボールが足に当たってたよね?大丈夫?』
「え、えぇ。まだ少し痛みますが、平気ですよ、これくらい」
『でもアザできちゃうかもだから一応氷持ってくるね。アイシングしよう!』
「わざわざすみません」


あれね、柳生わざとボールに当たったんだよ。まず、柳生がそんなヘマするわけないし、あの時俺は柳生にイップス使ってないからね。申し訳なさそうな顔してるけど、心の中では喜んでるに違いない。全く彼は仁王以上のペテン師だよ。柳生のアイシングを済ませてみょうじさんは少し離れたところで休憩後の練習メニューについて話しているであろう、真田と柳に近寄った。あの二人もみょうじさんが好きなんだよ。といってもあの二人は自分が彼女の事を好きだということに気付いてないんだけど。


『真田くん、柳くん。あのね、相談があるんだけど』
「なんだ、みょうじ。言ってみろ」
「どうした、そんなに改まって」
『あのね…今日、はちみつレモン作ってきたんだけど出してもいいかな?』
「む?なぜそんな事を俺達に聞く。お前が作ったんだ、皆喜ぶ。出してやれ」
「弦一郎の言う通りだ。なまえの差し入れを喜ばない部員はいないだろう。むしろ、それを食べてこの後の練習に力が入る確率96.8%。無論、俺達二人も含めてだ」
『ほんとに?じゃあ出してくる!真田くんも柳くんも食べてね!』
「あぁ」
「楽しみにしている」


彼女を見送る二人は明らかに好きな女の子に向ける視線をしているのに全然気付いてないんだもんなー。真田はわかるけど、あの柳も自分の恋愛沙汰はだめだめだね。もしかしたら相手が彼女だからかもだけど。あ、おれ?勿論彼女の事好きだよ。誰にも負けない自信があるね。でも今は常勝立海、三連覇に向けて一丸となって練習しなくてはならない。だからまだ彼女への好意を口にすることはない。多分、皆もそうだと思うんだ。でも、来年の全国が終わってしまったら俺達はきっと彼女を巡ってライバル同士になるだろう。まぁ、誰にも負けないけど。

*2年の全国終ったくらい
(20130501)
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