私はしがない立海大テニス部のマネージャーです。しがなすぎてマネージャーAどころかマネージャーEぐらい。むしろそれ以下。まぁそれだけ名門テニス部にはたくさんマネージャーがいる。最初は有名な部活だから厳しいんじゃないか、自分なんかにマネージャーが務まるのか心配で、実際やる事も多くて厳しいところもあってかなり大変だけど、先輩もすっごく良くしてくれて助けてくれるし、いい部活に入れたと思ってる。選手の皆もとっても優しいし、やっぱりテニスしてる皆はかっこいい。
そんなマネージャーEにも好きな人くらいいるわけで。そのお相手は一つ上の柳先輩。先輩は幸村先輩と真田先輩と並んで三強なんて呼ばれて、校内の人気もとっても高い。だからと言って驕らず、私の様なペーペーにも気さくに話しかけてくれてる、そんな人だ。(他のお二人どころか選手皆良い人だけど)
先輩は中学生には見えないくらい見た目も考えも大人びていて、ほんとうに私なんかが釣り合う人ではないと思ってるけど、一丁前に欲はあるみたいで、先輩ともっと仲良くなりたいとか思ってしまう。
ある日、部誌の当番だった私が部室に書きに行った時、柳先輩が一人部室に残っていた時があった。その時柳先輩と初めてたくさんお話をした。柳先輩はマネージャーのデータも欲しいと言って、私の事を知りたいと言ってくれた。きっと先輩は、データの為というそれ以上でもそれ以下でもなかったんだろうけど、私は馬鹿みたいに緊張してうまく喋れていたのかも、むしろ自分が何を話していたかも良く覚えてない。そんな私を先輩は面白い奴だと笑ってくれた。私は自分の胸がぎゅうっと痛いくらい締め付けられる様な感覚がした。それから部室中も、部活以外でも時々話しかけてくれる様になった。
でも今日、部活終わりに柳先輩が、マネージャーの先輩に告白されているのを偶然見てしまった。私は二人に気付かれないようにそっとコートを抜け出し、急いで荷物を取ると、そのまま家に帰った。その日は自分でも良く分からなかったけど、たくさん涙が出た。二人は仲も良かったし、何よりお似合いじゃないか。私のようなやつよりも、先輩の方が、気が利いて気さくで、優しくて可愛い。非の打ち所がない素敵な女じゃないか。柳先輩も、好きだけど、あの先輩の事も大好きじゃないか。なんで応援出来ないんだろう私は。最低だ。散々泣いても幸い明日は土曜日だし、このひどい様を見られて困る人はいない。この休みの間だけたくさん泣いて、月曜日からは二人をきちんと応援できるいい後輩になろう。そう決めてたくさん泣いた。
月曜日、朝部活に行くと、先輩から柳先輩に告白したけど断られてしまったと言われた。柳先輩には好きな人がいるそうだ。断られたはずなのに先輩は少しすっきりした面持ちで、「私はあんたの事、応援するよ」と肩をバシッと叩かれた。急に叩かれてびっくりして私が痛い！というと先輩はニカッと笑いながら、「柳の好きな子は2年にいるよ、頑張んな」と言ってコートに出て行ってしまった。一人部室に残された私は何が起きたのか分からずただ、立ち尽くすのみだったけど、後から先輩の言った意味がわかって顔から日が出るみたいに熱くなってしまった。これは、しがないマネージャーEが期待しても良いって事だろうか？
(20160219)