最近、幼馴染の若の様子がおかしい。いや、元々ちょっと変わった子ではあるけども、最近は特にだ。若とは家も隣で、氷帝にいる子は結構皆なんだけど、幼稚舎からずっと一緒で、一緒に居ることが当たり前だった。むしろ一緒にいない方がおかしいくらいだった。なのに、最近若は私と距離を置くようになった。距離というのは物理的なものではなくて、相変わらず一緒には居るんだけど、私の事を突然学校で、なまえではなくみょうじと呼ぶようになったのだ。そして若は私に、学校では自分の事を日吉と呼ぶように言ってきたのだ。なぜかと聞いてもそうしろとしか言われなくて、私が学校で若の事を名前で呼ぶと苗字で呼べと怒られた。意味がわからない。なんで今までずっと一緒で兄妹のように育った若を苗字で呼ばなくてはならないのか。お互いの家に行く時など、学校の外では若と呼んでも怒らないし、私の事は名前で呼ぶ。わけわからん。


『なんで学校だと名前で呼んじゃいけないのかほんとわけわかんないんですよねー』
「日吉も中学二年やし、思うところもあるんやろ」


自分で考えても拉致があかないので、私は割と仲の良い忍足先輩にどうしたものかと相談していた。忍足先輩は周りの事をよく見ていて、気の利く人だから、何か若の事も気付いてるんじゃないかと思っての相談だ。私の読み通り先輩は何か知ってるみたいだけど、若のいないところで話すのは若に悪いと詳しくは教えて貰えなかった。


「なまえちゃんは知らんやろうけど、日吉のやつ、結構なまえちゃんの事でからかわれたりしてるねんで」
『えっ!そうだったんですか?!』
「せや。まぁ、お前らみたいに男女が一緒にずっとおったら、そら羨ましく思う奴がおるわな。それで日吉をからかって遊んでるんとちがう?」
『そうだったんですか。…知らなかった』


それならそうと若も言ってくれたらよかったのに。からかわれて恥ずかしかったのかな。でも私はそんな事全然知らなかったな。私がうーんと考えてると忍足先輩は頭をくしゃくしゃ撫でてきて「日吉はお前が嫌いとかやないから安心しい」と言った。


「からかってる連中も、羨ましいだけやからそんなん気にせんでもええのになぁ?こない可愛い幼馴染と仲ええの見せつけたるくらいせな」
『はぁ。そういうもんでしょうか?』
「そうや。せやからなまえちゃんは、日吉は思春期なんだわーって思ってしばらく付き合うたり。そのうち自分からまた学校でも名前で呼んでくるようになるわ」
『そうですかね』


忍足先輩は面白そうに頭を撫でながら笑った。丁度その時後ろから若が私を呼んで、振り返ると若がずんずんこっちへ来て私の手を取るとそのままこっちへ来いと引っ張り出した。私は忍足先輩にお礼を言うと先輩はまた笑って「ほなな」と手を振ってくれた。


「お前、忍足さんと何話してたんだよ」
『んー?若が思春期だって話し?』
「なんだそれ。というかあんまり忍足さんに近づくなよ、あの人危険なんだから」
『そうなの?私には優しくしてくれるけどなぁ』
「…はぁ」
『なんでため息?ねぇ若、なんでため息したん?』
「もういい、この鈍感バカ」


「ほんとはからかわれてるってだけじゃない事、俺は知ってんねんで。日吉」


(20150510)


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -