「…俺、女じゃないよ。男なんだけど」
『えぇ!?嘘っ!す、すいません!!とんだ失礼を…!』


どどどどどどどうしよう!担任の真鍋先生に、新学期早々いじめか!ってくらいの量のプリントを職員室まで運ぶように言われて、一人教室から運んでたら通りすがりにこの子が一緒に運んでくれる事になったんだけど、とっても綺麗だったから女の子と間違えてしまった。男の子を女の子と間違えるなんて私のバカ!でもこの子、男の子にしたら華奢だし、髪の毛も少し長めだし口調も柔らかいし、そして何よりお顔がとっても綺麗で、ぱっと見女の子なんだもん!…でも言われてみれば普通に男子の制服着てたでござる…。まじ申し訳ねぇ!きっとこの感じからしてよく女の子に間違われてるんだよね?だからまたかよみたいな表情してんだよね?うわああああ最悪だ!よりにもよって人の気にしてるところを私はあほ面でえぐってたという訳でですね。最低じゃねぇか!

『ご、ごめんなさい…あなたがとっても綺麗で女の子みたいだったから』
「自分でもね女顔だって分かってるんだけど、いざ女の子に言われちゃうと凹んじゃうよ」


ですよねー!ほんっと申し訳ない!私も身長低いの気にしてるからそこ触れられると凹むもん。…あれ?もしかしてこの子幸村くんじゃね?うわー初めて近くで見た。テニス部は色々な意味でも有名だから名前は知ってたけど、私はテニス部に興味がなかったから顔も知らなかったけど、これ幸村くんだよ!クラスの女の子が話してたもん。C組の幸村くんは"女の子みたいに顔が綺麗"って。あばす。


『もしかして、幸村くんですか?』
「俺の事知ってるの?」
『え、えぇ。まぁ、うちのテニス部は有名だもん。その部長さんだよ?たくさん表彰とかされてるじゃん。それにクラスの女の子がよく幸村くんの話してる』
「へぇ、どんな?」
『幸村くんは女の子みたいに顔が綺麗でかっこいいって…』
「………」
『はうっ!またごめん!』
「あはは、いいよ。"かっこいい"って言ってくれてるなら、せめてもの救いかな」


そうやって笑う幸村くんはもうそんじょそこらの女子じゃ太刀打ちできないくらいお美しかったです。幸村くんちょう美人。でも男の子に美人は誉め言葉じゃないと知った中3の春。あんま興味なかったけどこれは女の子が騒ぐのもほいほい幸村くんに惚れるのも分かる気がするわ。私はこういうお方とは釣り合わなさすぎて気が引けるけど。


「ねぇ君、名前教えてよ」
『ん?E組のみょうじなまえだよ』
「みょうじさんね。君みたいな女の子初めてだからすごく面白いよ。よかったら仲良くしてくれないかな?」
『幸村くんと仲良くしてたら女の子たちに殺されそうでこわいけど、いいよ』
「そんなことないよ。でも、本当に君は今までに会った事のない女の子だ。なんだか、俺、一目惚れしちゃったみたい」
『なぬ?!』


幸村くんはその綺麗なお口からとんでもない言葉を言い放つと、今までの柔らかい雰囲気から一変、ちょっと恐ろしいような、獲物を狙うような目で私を見るとこれまた恐ろしく妖艶で美しい表情で微笑んだ。


「覚悟しておいてね?」
『(あ、これは逃げられる気がしない)』

(20134020)
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