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『ふう……長い話だったね』

「仕方ないだろう身分を証明するものがないのだ」

「それはおたくらが、だろ?」


船に飛び乗った……まではよかったんだけど、船長さんに事情を聞かれたりいろいろ時間がかかっちゃって…今ようやく解放されてふと甲板を見回すと海を、眺めているジュードを見つけた


「…ア・ジュール行きだなんて…外国だよ」

「まさか医学生だったとはね」

「あ…えっと」

「アルヴィンだ」


うつむいているジュードに近づいて私達を抱えて船に飛び乗った男の人―アルヴィンが話しかけた。


「名前だよ。おたくはジュードっつったかな?」

「う、うん。こっちがミラで、そしてあっちが…」

『リスィだよ。さっきはありがとね』

「いいや?……ほら見ろよ、イル・ファンの霊勢が終わるぞ」


空を見ながらアルヴィンがいうと今まで夜だった空が一瞬で青空に変わる


『夜域も好きだけど、やっぱり青空の方が好きだな』

「しかし、あの中にいるとどうも時間の感覚がわからなくなるな」

『ふふ、確かに』


空を見上げながらミラと話していると後ろでジュードがアルヴィンに話しかける声が聞こえて振り返る


「あの…聞いていい?」

「なんだ?」

「どうして助けてくれたの?あの状況じゃ普通助けないよ?」


そうジュードが躊躇いながら聞くとアルヴィンは少し笑いながら口を開く


「あんたらみたいのが軍に追われてるってのは相当ヤバい境遇だ。そいつを助けたとなれば金をせびれるだろ?」

「でも僕お金持ってないよ?」

「あいにく私もだ」

『私もない、かな』


次々に答える私達にアルヴィンは肩を落としつつ


「マジか…じゃあ何か値打ちもんでもあればそれでもいいぜ?」

「ないよ。あんな状況だったんだ…」

「ないな」

『値打ちもの…か』

『(そういえば今だとアレってどれくらいの価値なんだろ?)』


私達の答えに更に肩を落としたアルヴィンを見てジュードは話を変えようと


「そういえばアルヴィンって何してる人?軍人っぽいけどちょっと違う気がして」

「お、いい線いってるね傭兵だよ。金はいただくが人を助ける素晴らしい仕事」

「うむ、それは感心することだ」

『ミラ、それどこらへんを聞いて思ったの?』

「そのままだが?」


ミラと私の会話を聞いてアルヴィンは頭を掻くと


「しゃーない、ア・ジュールで新しい仕事を見つけるか」

「ア・ジュール…か…」


アルヴィンの言葉にジュードは再びうつむいて海を眺めていた





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