1年間だけの恋AA視点

2011/12/09 08:10


※注意書き
ゲーム内でもなく現パロでもないよくわからない設定
暗殺組織に所属してるアルヴィン(26)と
癒しと破壊の能力を持ってるジュード(15)
な設定です。
一応シリーズもの
それでもいい方はどうぞ




















俺がジュードと出会ってから2ヶ月程経った
あれ以来俺とジュードは小屋で一緒に暮らしている。


「んじゃ、いってくるな」

「うん、ありがとうアルヴィン……ごめんね、いつも」

「そんな顔すんなって、いつも言ってるだろ?俺がやりたいだけなんだからさ」


そう言って扉の前に立って申し訳なさそうな顔をするジュードの頭を撫でる


「なんかリクエストでもあるか?」

「ううん、なんでもいいよ。作る時に考えるから」

「わかった、行って来るな」

「うんいってらっしゃい」


見送るジュードの声を聞きながら俺は街へ向かった




「…よし、こんなもんでいいだろ」


普段より人通りが多く少し時間がかかったが、ざっと1週間分程度の食料を買い小屋へと帰ろうと歩きだした時、大通りの片隅で母親達が話している声が聞こえてきた




「そういえばこの間、またあの子が来てたみたいよ」


「また来たの?はた迷惑な子ね」


「あの子がうちの息子にぶつかってねぇ」



「(こいつあん時の母親か…どう考えてもお前の子供がぶつかってただろ)」



「しりもちついた息子に手を出そうとしてたのよ!」



違う、あれはどう見たって立ち上がらせようとしてただろ―



「怖いわねぇ、あの子には気を付けないと」


「得体の知れない不気味な子だし。まるで……」







「化け物みたいよね」






「っ…!」



その言葉を聞いた瞬間自分でも驚くほど母親達に強い怒りが込み上げてきたが、そのまま母親達にぶつけるわけにもいかずに足元の小石を力任せに蹴り飛ばして街を離れた







街を出て小屋に近づくにつれて冷静になっていく思考で先ほどの会話を思い返す


「…なんで俺はあんなに…」


なぜあんなに怒りが込み上げてきたのか理由がわからない
このもやもやとした感情なんなのかもわからなかった


「とりあえずさっさと帰るか…ジュードも待ってるだろうし」


ぐちゃぐちゃな思考を頭の片隅へ追いやって、止めていた足を再び動かし小屋へと歩きだす。


「ただいま……ジュード?」


いつもなら扉を開ければすぐに寄ってくるはずのジュードがいない
街には行くわけがないので小屋近くかこの先の森しか行く場所はないはず


「どこにいったんだ…?」


とりあえず荷物だけ置いてジュードを探しに小屋を出て裏手に回るとすぐに探し人は見つかった


「(あんなとこにいたか…)」


小屋の裏手にある小さな椅子に座るジュード。
膝の上になにやら白いなにかを乗せて手をかざし、白いなにかを光が包み込む
そのまま黙って見つめているとやがて光がおさまり、膝の上に乗っていたなにかが元気よく羽根を広げる


「(鳥…か…?)」

「よかった…」


ほっとしたようにつぶやいたジュードはそのまま自分の手を見つめていた


「(癒しの力か…こいつは力を持ってるだけで普通の奴と同じなんだよな…でも…)」


自分は本来仕事としてジュードを殺しにここへ来ている
なのに未だ殺す事は出来ていない
それどころかジュードを殺す事に躊躇いや疑問まで持ち始めている


「(何をやってるんだろうな俺は……こいつを殺しに来たってのに…)」


しばらく考え事に耽っているとこちらに気付いたらしいジュードが声をかけてくる


「アルヴィン…?帰ってたの?」

「ああ、ついさっきな
ジュードがいないからちょっと探しにきたんだ」

「あ…ごめんねアルヴィン」

「いいや?それより小屋に戻ろうぜ」

「うん」


ジュードは自分の膝に乗せていた鳥を優しく地面へと降ろし俺に走り寄ってくる


「怪我でもしてたのか?あの鳥」

「うん、ちょっと羽根を怪我してたみたいで…すぐに治ってよかった」


そう言って心底安心したような表情で微笑んでいた


ジュードは必ず自分より他人を優先させる
何度も(俺が言える立場じゃないが)自分を大事にしろと言っても今だになおらない。おそらくもう癖になっているんだろうが


「…そういう所がほっとけないのか…?」

「え?アルヴィン何か言った?」

「いーや?あ、そういや街に出た時いつもよりなんか賑わってたけど今日何かあるのか?」

「今日……?確か……」


何か思い出そうと考えているジュード
数秒経って思い出したように俺に話しかける


「…確か夏祭り、だったと思う」

「夏祭り?」

「うん、結構大規模な祭りでね色んな所から人が集まるんだって
最後には花火があるからそれを見る為だけに来る人もいるみたい」


だから普段より人が多かったのか…
ジュードの答えに納得しているとふと言い方に違和感を覚えた


「ジュード」

「なに?アルヴィン」

「その祭り…行ったことない…よな?」

「………うん」


思った通りか…こいつの事だから街の奴らを気にしての考えだろうけど


「やっぱりか…じゃ、今日は夏祭りとやらに行こうか」

「え…でも…」

「今日くらい、いいじゃねぇか。人も増えてるしいちいち気にしちゃいないだろ」


な?と有無を言わさずジュードに聞くと僅かだがうなずいた


「よし、じゃあ出かける準備するか」

「え、今から…?まだ時間はあるよ」

「備えあれば憂いなしだろ」

「使い方が微妙に違う気がするけど…」


そう返事をするジュードは表情こそあまり変わらないがいつもより楽しそうにしていた

それから2人で時間になるまで祭りや今日のことをお互いに話しあった





―夜―



「じゃあ行くぞジュード」

「うん」


空も少し暗くなってきた頃街へ行く為に2人で小屋を出る
街に着くと昼間見た時よりも人が増えていた


「こりゃすげー人混みだな…離れるなよジュード」

「う、うん…」


人を掻き分けながら前を進んでいると後ろにいたジュードの小さな声がした


「う、わっ…」

「大丈夫か?ジュード…ほら」

「手…?」

「つないでた方が安心だろ?」


少し驚いた顔をして俺の顔と手を交互に見ているジュードの手をとって人混みの中を進んでいく
後ろのジュードが小さくつぶやく


「……ありが、とう…」

「どういたしまして。
…さて何やりたい?」

「え…と…何があるかわかんないや」

「じゃあとりあえず回ってみるか。何をやるかはそれで決めようぜ」

「うん」



それから俺達はあてもなく祭りの屋台を回って過ごした






「結構取れたね!」

「ジュードも意外と上手かったじゃねぇか」

「アルヴィンの教え方がよかったんだよ」

「まぁな(しかしこんなところで今までの経験が使えるとはな…)」


俺が見つけた屋台は射的というゲームの屋台だった
何故だか知らないがやりたくなって気が付けば半分ほどの的を倒していた
途中からジュードも参加してきて少しコツを教えたらすぐに上手く出来るようになっていた


「いっぱい回って疲れたね…」

「そうだな…ちょっと休むか」


そう言って街の中心から少し離れたところにあるベンチに座る


「どうだジュード、初めての夏祭りは。楽しかったか?」

「うん。…今まではずっと小屋の中にいることばっかりだったから」

「そっか」

「ありがとうアルヴィン、今日僕をここに連れてきてくれて」


そう言って俺に笑いかけるジュード。
その顔はほっとした時や悲しげな時の顔とは違って心から嬉しそうに笑っていた


「っ…」

「?どうかしたの?アルヴィン…あ」


不意打ちの笑顔に顔が赤くなる
それが気になったのかジュードが声をかけてくるがそれと同時に明るくなった空に意識を奪われる


「アルヴィン、花火だよ」


先ほど浮かべたのと同じ笑顔で空を見るジュードは見ていると普通の少年と変わらない
ジュードの笑顔を見ているとずっと見ていたい感情が溢れてくる


「(ああ…そうか)」


俺がジュードを殺せない理由。
俺はジュードを…


「(好きになってたみたいだ…)」


そう自覚した





「最初は殺す相手だった」

「でも今は、俺にとって大事な人になった」


続く






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