君と生きる3話

2012/12/21 14:40


「ジュード・マティスのお見舞いに来ました!」


たまたま通りかかった受付でそう大きな声で話す少女に歩いていた足が止まる。

今ジュードの名前を言ってなかったか…?

そう考えていると対応していた看護師は


「レイアちゃんこんにちは、いつも大変ね」

「いえいえ!じゃ、行きますね」

「廊下は走っちゃダメよ」

「うう…わかってますよー」


本当は走ろうとしたのか勢いよく蹴り出そうとした足を慌ただしく直しながら病室へと向かっていった。



第3話


先ほどの少女が見えなくなり話していた看護婦へと近づいていくと俺に気が付いた看護婦は向き直って挨拶をする

「あ、おはようございますアルヴィン先生」

「おはようございます…今の子は?」

「ああ、レイアちゃんですか?ジュードくんの幼馴染なんですよ。」

「幼馴染…?」

ジュードに幼馴染がいるなんて初めて聞いた。そう思ったがすぐにその考えを吹き飛ばす

「(当たり前だ、俺はジュードとそんな話をするほど親しくなってはいない)」

むしろ嫌われてるんじゃないかと思う。俺が何をしようと無反応なのだから。先日ローエンから変わったばかりだしそんなもんだろと思ってはいたのだが…

「(小さい子には結構好かれるんだけどな)」

どうも少し年齢が上がるとそうでもないらしい、そこまで考えて自然と足がジュードの病室へと向かう。純粋にジュードがあの幼馴染とどんな会話をしているのか、それが気になってジュードの病室へとゆっくりと向かっていく。
どうやら病室の扉が空きっぱなしになっているらしく先ほどの少女の声が廊下にも響いている。

「こりゃ、ちょっと注意しとかないとだな…」

そう1人ごちると歩く速さを変えずに病室へ向かい空いているドアから中を覗き込むと少女は背中を向けて、ジュードと話していた。それを見て次にジュードの方を見てみると確かに笑っているのにどこか違和感を感じる表情に思わず声をかける

「…っ、おーい、話してるならドアくらい閉めておけよ」

「あ、すみません!…ってあれ、あなたは?」

声をかけると先ほど見た少女が振り返り俺を見て首をかしげる。

「ああ、ジュードの担当医のアルヴィンだ」

「ローエンから変わったんだ…よろしくアルヴィンくん!」

「くん…って、まぁいいけどよ。おたくは」

「私はレイア・ロランド!レイアでいいよ…って、あ!もう帰らないとだ!」

明るく笑う少女―レイア―につられて笑顔になる。ふと時計を見た少女は何かを思い出したように立ち上がると勢いよく帰る支度を始める。

「レイア、そんなに急ぐってことはソニアさん関係?」

「そう!帰りに買い物頼まれてたんだ!じゃあジュード、またくるね!」

「期待しないで待ってるよ」

苦笑するようにレイアに笑うジュードに先ほどのような違和感は感じなかった。だけどさっきのジュードの表情がなんだか作り物のような感じがして妙に心がざわついた。
そんなことを考えていると不意に腕を引っ張られて階段近くまで連れてこられる

「っと、いきなりなんだよ?」

「アルヴィンくんはさ、」

「?」

「ジュードの笑顔見てどう思った?」

ジュードに聞こえないようにか先ほどより抑え目に話す少女の問いに驚いて動きが止まる。自分を見るレイアの真剣な目を見て少し考えた後、思ったことを口にする。

「なんつーか、言い方悪いけど作り物っぽく感じたな」

「やっぱりそう思う?…最近は特にひどいんだ」

「最近って」

「もうちょっと前はまだそんなんじゃなかったんだけど…」

悲しそうにうつむいて話すレイアだったがすぐに顔を上げると

「だからアルヴィンくん!ジュードのことお願いね!!」

「は!?」

「こんなことアルヴィンくんにしかお願いできないの」

「…まぁ、やれることはするけどよ…」

ローエンといい、レイアといいなにを思って俺に頼むのかまったくわからない。頭をわしわしと掻きながら呆れたようにレイアを見ると

「じゃあ、頼んだからね!ジュード、私にも作った笑顔だから」

それだけ言うとレイアはそのまま病院を後にした。残された俺はどうしたもんかと考えながらジュードの病室へと戻ることにした。








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