拍手連載第8話

2012/12/07 21:10


「アル兄ちゃんなんて、信じない…あなたも信じないっ!」

そう言って去って行くマティスの横顔は切羽詰っていて泣きだしそうに見えた。


第8話


風邪で体調もよくないのに出歩くのは危険だと急いで廊下を見渡すがどこにも見当たらない。

「どこに行ったんだよ…」

そう悪態をつきながらも廊下を当てもなく探しているとふと階段の上から話し声が聞こえた

「ちょっと、ジュード!なんでこんなとこに…保健室で休んでたんじゃないの?」

「う…ん、でももう大丈夫…」

「全然大丈夫そうに見えないよ!ほら保健室帰ろうよ」

「大丈夫、だからっ…」

そうマティスの掠れている声と相手はおそらくロランド。そう理解すると勢いよく階段を上って廊下を見ると壁にもたれかかっているマティスと手を貸そうとしているロランド。

「あ!先生、ジュードが…」

「わかってる、連れていくから教室へ戻れ。そろそろ授業だろ?」

「うん…ジュードをお願いね」

そう言い残すと心配そうな顔を浮かべたまま教室へと戻るのを見送ると未だ壁にもたれかかっているマティスに近づくと話しかける。

「まだ熱も下がってないんだから無理すんな。戻るぞ」

そう言って反応のないマティスの体を抱きかかえて階段を下りているとマティスの口が小さく動いているのに気づき耳を寄せると「ごめんなさい」「ひとりでも大丈夫だから」と魘されているようにひっきりなしにつぶやいている。

「(いったい何があったんだよ…)」

そう顔を顰めながらマティスを抱える力を強くしながら保健室へと戻った








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