欲しいのはあなたのぬくもり

2011/11/21 09:16


※相互記念捧げ物小説





僕は昔からある病気を患っている。



でも年を重ねるごとに頻度は少なくなって、今では滅多に発症しなくなっていた。





だから忘れていたのかも知れない、この病気のこと―――――……………











「とりあえず撒けたみたいだな」


「うん……みんなは無事かな」


「ばらばらになっちまったもんな…けど大丈夫だろ」



あっちには回復役いるからなと隣に立って息を整えているアルヴィンが答える






魔物討伐の依頼を受け、目標の魔物を討伐したまではよかった。
けど帰り道に複数の魔物に囲まれ、みんなとばらばらになってしまった。




「とりあえず街を目指そうか、みんなも帰ろうとするだろうし…」


「ああ、そうだな。…少し急ぐぞ。奴らの残りがうろついてるかもしれないからな」


「うん」



当面の目的地を決め、街へと向かおうと止めていた足を動かした時



ずきん―――…



「…っ…!…」



「どした、ジュード?」


「大丈夫、なんでもないよ。早く帰ろう?」



心配そうに僕を見るアルヴィンにそう笑いかけて、先ほど感じた胸の痛みを忘れることにした。








ずきん―…ずきん―…




「ジュード、ホントに大丈夫か?」



先ほどより痛みの増した胸の痛みに顔をしかめているとまたアルヴィンに心配そうに聞かれる



「平気、だよ。ほら急ごうよ」



アルヴィン…と続こうとした言葉は突如あらわれた数体の魔物によってさえぎられる



「ちっ…さっさと片付けるぞ」


「うん!」




武器を構え、数体の魔物に攻撃をしかけていく。
思ったより強くなかったのかすぐに数を減らしていく魔物
最後の一体を倒そうと向かった時、今まで僅かだった胸の痛みが一気に強くなった



「…ぅ…ぁっ……!」


ずきんずきんずきん―



痛みで立っていられなくなった体は崩れるように膝をつく



「ジュード!?」



まわりの魔物を倒しこっちに向かってくるアルヴィン
僕の前にはさっき倒そうとした熊の姿の魔物が爪を振り下ろそうとしている



「けほっ!……はぁ、はぁ…ぅ…」


胸が痛くてうまく息が出来ず視界がぼやける
そのまま重力に逆えずに目蓋を閉じた




「ジュード!」




アルヴィンの声が聞こえたと同時に何かに引っ張られ、銃声が響く。
目を開けた時僕はアルヴィンの腕の中にいた。
さっきの銃声は魔物を撃った音みたい



「おい、大丈夫か?」



「はぁ…はぁ…う、…ん」



ふとアルヴィンの腕が視界に入ったとき



「あ……っ!」



自分でもわかるくらい体が震えはじめた



「ジュード…?」


「(僕の…僕の、せいで……?)」



アルヴィンの腕は、さっきの魔物の爪によってつけられた傷から血を流していた


「僕がっ、…けほっ!…っ…僕、のせいで…」



体の震えは止まらず、涙が溢れそうになる。けどアルヴィンの腕へ手を近づけて治そうとするとアルヴィンに手を押さえられてそのまま抱き締められる



「ジュードのが重症だろ。おとなしくしとけ」


「…はぁ…はぁ…」


胸は痛いままだったけど抱き締められてる暖かさと安心感に誘われるまま目を閉じた。





――――――……




「…ぅ…」



目が覚めると少し薄暗い洞窟のような場所にいた
上体を起こすと見慣れたコートがかけられていた



「ここ、は…」



まだ若干痛む胸に言葉がつまる
しばらく回りを見回すと足音が聞こえ振り返ると



「起きたか?」


「アル、ヴィン…?」



木の枝を持ったアルヴィンは少し離れた場所に枝を置くと火を付けてから僕の方へ近づいてくる



「大丈夫か?」


「うん…大丈、夫」



心配かけないように笑って答えるとアルヴィンの顔が訝しげになる。



「嘘つけ、まだ顔色悪いぞ」


「そんなこと…」


「ホントに心配したんだからな」



そう言いながら僕はアルヴィンに抱き締められる



「(…心配…?…僕…迷惑かけただけなんじゃ…)」


「いっとくけど、迷惑なんかかけてないからな」



心を読まれたみたいに言ってくるアルヴィンに驚いて少し目を見開く



「なんで話してくれなかったんだ?」



恋人同士だろ?と聞いてくるアルヴィンに俯きながら答える



「だって…迷惑…かけたくなかった…
今までだって、1人でも…大丈夫、だったから…」




呆れられたかもしれない。
俯きながら怖くて目を強く瞑った



「はぁ…」



直後に聞こえたため息に体が大げさなくらい跳ねる



「普段頭いいのに、こういう時バカだよなぁジュードは」



アルヴィンは喋りながら僕を抱き締める



「(今日、アルヴィンに抱き締められてばっかだ…)」


「1人で抱え込むのはよそうってジュードが言ったんだろ?
なのに自分は抱え込むってのはなしだろ」


「で、も…」


「いいから、ほら話してみ」




言われるがまま自分の体の事を話し始めた。

器官器系の病気で酷いと息切れや咳が止まらない事…

死ぬ事はないけどヘタをしたら死にそうなくらい酷くなったりする事…

過去に何度か発症してるけど忙しい両親に迷惑かけちゃダメって思って最初の時以外は1人で、治るまで部屋に閉じこもってた事…

全部を話した。


話し終えると疲労からか強い眠気が僕を襲いはじめる


「眠いなら寝ちまえ、ほら抱き締めといてやるからさ」



アルヴィンに抱き締められて強い安心感と人の暖かさを感じ、そのまま目を閉じた









「ったく、それならもっと早く話してくれればよかったのにな」



腕の中で安心したように眠るジュードの唇に軽く触れるようなキスをする



あの時戦ってる最中にいきなり倒れるジュードを見て背筋がゾワッとした。



「んな病気持ってるなんて知らなかったからな…」



蹲るジュードに迫る魔物を見た瞬間咄嗟にジュードを引き寄せて庇った。
腕を少し裂かれたが大したことはなかった。しかし傷をみたジュードはカタカタ震えて



「僕がっ、…けほっ!…っ…僕、のせいで…」



涙をにじませ言葉に詰まりながらも治そうとするジュード





「ホントに…どうしてこいつは自分より他人を優先させるかねぇ…」



抱き締めたジュードの頭を撫でながら呟く
寝ているジュードの顔は少し苦しそうだったが穏やかな表情をしていた。
昔は1人で耐えていたみたいだがこれからは―



「俺がそばにいてやるよ
これから先ずっと、な」




そのまま俺はジュードを抱き締めたまま眠りに落ちていった。



End






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