キスしてくれないならこちらから

2012/10/10 22:10



自分でもわかるくらいいつもより上機嫌でキッチンに立つ僕。なんで上機嫌なのかっていうと…

「うん、おいしくできた。アルヴィン喜んでくれるかな?」

そう、今日はアルヴィンが久しぶりに帰ってくる日。最後に会ったのは確か二旬前だからもうずいぶんと前になる。
出来上がった料理を見渡し、ふと時計を見るとアルヴィンが言っていた時間が迫っていた。

「そろそろ帰ってくるよね…」

リビングへ移動すると同時にチャイムが鳴り響く。
アルヴィンだ、と小さく呟いて急いで玄関のドアを開けると目の前には二旬ぶりに会う彼の姿。

「おかえりアルヴィン、時間ぴったりだったね」

「まぁな、ジュードを待たせるわけにはいかないだろ?」

そう言って笑いながらウィンクするアルヴィンに僕もつられて笑顔になる。

「ご飯もできてるから一緒に食べよう?」

「久々にジュードの飯、食べたかったんだよな」

そう言ってリビングへと入っていくアルヴィンに、ふと違和感を覚えた

「(あれ…?)」

「どうした?ジュード」

「あ、ううん。なんでもないよ。ほら座って?」

その違和感がなんなのかもわからない頭の隅に追いやってアルヴィンをそう促した



*******



やっぱり違和感を感じる。
二回目にそう思ったのは風呂から上がって二人でテレビを見ていた時、そして違和感の正体もなんなのかわかってきた。

「(今日一回もキス、されてないんだ…)」

いつもは帰ってくる度にすぐにキスしてきてくれてたから今日まだされていないのが違和感だったんだ。

「(でも、なんか…欲求不満みたいで恥ずかしい…///)」

「どうしたジュード、顔赤いぞ?」

「え?な、なんでもないよっ?」

そんなことを考えている最中にそう言われて慌てる。アルヴィンを見るとニヤリと意地の悪そうな顔をしてるもんだから少しむ、っとなる。
なにか仕返しをしようと考えてアルヴィンに向き直ると笑っているアルヴィンの唇をふさぐ。

「んっ…ふ、…んんっ?!」

キスをして離れようとした僕の後頭部に手をあてるとアルヴィンはさらにキスを深める。
苦しくてアルヴィンの胸を叩くとようやく離れる唇。

「っはぁ、はぁ…いきなりするのやめてよ!///」

「ジュードがしてくるのが悪いんだろ?俺は我慢してたってのに…」

そう言って腰が抜けた僕を姫抱きにして寝室まで運ぶとベッドへ優しく降ろすと触れるだけのキスを何回もしてくる。

「だ、て…」

「ん?」

「いつもしてくれるのに、今日は、してくれなかったから…」

「……」

「アルヴィン…?」

「あーもう、どうしてそんな可愛いコト言ってくれるのかね」

「え?え?」

アルヴィンの言っていることがわからなくてひたすらに首をかしげる事しかできない。

「久々すぎてキスしたら押し倒しちまいそうだから我慢してたってのに…ジュードが悪いんだからな。…それと、これな」

そう言ってアルヴィンが取り出したのは小さな箱。
「開けてみてくれ」そういわれて蓋を開けると中にはシンプルな銀色の指輪が入っていた。

「アルヴィン、これ…」

「遅くなったけどさ、受け取ってくれるか?」

「当たり前だよっ…アルヴィン、ありがとう」

そう言って笑うとどちらともなく唇が重なった



キスしてくれないならこちらから


「そういやなんでいきなりキスしてきたんだよ」
「え?!あ、その…い、違和感があって…」
「考えてみたら、その…今日はキスされてないなって思ったらつい…」
「……」
「アルヴィン??」
「なにそれすっごい可愛い、心配すんな、これからたっぷりキスしてやるから」
「っ…ばほっ///」






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