あのひのやくそく
2012/10/03 11:47
※本編沿い転生学パロで両片思い、シリアスです
続きます
僕は僕以外の人の記憶を持っている。まぁ言うなれば前世の記憶っていうのかな
その記憶は物心ついた時から夢で見始めて今でも続いている。
この世界とは違ってゲームのような世界だったけど隣にはいつも“あの人”がいた。
僕よりも背が高くて男らしい人、だけどどこか寂しそうで放っておけない……そんな人。
男同士だったけど…それでも大切な人だった。
そんな夢を見た日はいつも涙を流している。何に泣いているのかわからないけれど
「今日もあの夢か……」
いつものように目を覚まして頬に手を当てて涙を拭う。
“あの人”と一緒にいる、夢。
顔はぼんやりしていてよく覚えてないけど“あの人”と一緒にいるのが心地よくて、嬉しくて。
でも目を覚ますと傍には誰もいないから余計に悲しくなる…それがいつものこと。
「早く支度、しないとね…」
誰にいうともなくそう呟くと手早く服を着替えて用意しておいた鞄を手に取り家を出て行った。
「アルヴィン」
そう俺を呼ぶ声がして振り返る。
振り返った先にはこっちに走ってくる“誰か”
その“誰か”に向かって微笑みかけて歩み寄っていく“俺”。
気がついた時から何度も見続けている夢だ
いつもこの夢を見る度早くあいつを見つけなければという思いにかられる。
あいつが誰なのかも知らないのに…
「っと、もう時間か。初日から遅刻はごめんだな」
それまで考えていた事を頭の隅に追いやり簡単に支度すると足早に家を出て行った。
この後にある出来事が起こることなど知らずに……
今日は始業式で、いつものつまらない先生の話を聞き終わると今日から赴任する先生の紹介が始まった。
呼ばれて壇上にあがった人を見て僕に衝撃が走り、“あの人”だと頭の中に声が響く。
途端目の前がチカチカして、僕はその場に座り込んでしまった
「ちょっと、ジュード大丈夫?!」
「…っ…大、丈夫……」
「でも顔色悪いよ!保健室行こう」
「…っ……」
「ほら、捕まって」
「ご、めんね……」
足元が覚束ないままレイアに連れられて保健室へ着くとベッドへと向かう。
横になってすぐに眠気が襲ってきてそのまま目をつぶった。
その時ドアが開いた音が聞こえたけれど、そのまま誘われるように眠りに落ちた。
始業式も終わり、先ほど倒れたという少年の様子を見に保健室へと向かう
「ったく、初日からお仕事とはね」
周りに聞こえないようにボソッと呟きながら保健室へ着くとドアを開けた。
中にいた女子生徒は俺の方へ振り返るとベッドを気にしながら話しかけてくる。
「あ、アルヴィン先生!」
「そいつが倒れたやつか?」
「はい…ベッドに横になってすぐ寝ちゃったみたいで」
「ん、わかった。ほら教室に帰んな、授業始まるぞ」
そう言って女子生徒を保健室から出て行かせるとベッドで眠っている生徒へ向き直る。
少し苦しそうな顔をしている生徒を見ていると唐突に頭が痛み出した。
「っ……なんだ、これ…」
痛む頭を必死に押さえているとふと脳裏に今朝の夢がフラッシュバックした。
夢の中で俺を呼んでいるあいつが目の前のこいつと重なる。
「…ジュー…ド…?」
口から出た名前は誰にも届くこともなく消えていった。
続く
後書き
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