拍手連載7話
2012/10/02 11:19
思い出した昔の記憶は僅かだったがそれでもこいつと過ごした数日間は俺にとって楽しい日々だった
その時以来約10年ぶりの再会、ほとんど変わらないジュードだがふと腕の包帯に目を奪われる。
第7話
「こんなの、前はなかったよな…」
眠っているジュードの腕を起こさないように持ち上げて袖を捲る。
なにか怪我をしているのなら治療してやろう、そんな軽い気持ちで包帯を解いていくとそこには刃物で切ったような切り傷が何重にもつけられていた。
「っ!?」
あらわれた傷に一瞬息が詰まった。瘡蓋にもなっていない傷口はおそらく最近つけられたんだろうと推測する。
「なんで…こんな」
この10年のうちになにがあったのか…しかも傷の位置を見る限り自分で傷つけたと見て間違いないだろうが…
しばらく傷を見ていてとりあえず治療しようと近くの薬を取ろうとした時
「んっ……」
「!目、覚めたか?」
「あれ…僕…」
しばらくボーッと周りを見渡していたジュードはふと俺に握られている自分の腕を見た途端、サーッと顔色を変え、俺の手を振り払い腕を抱え込んで布団に潜った
「マティス!」
「なんでもないんで、向こう行ってください」
マティスから返された言葉は頑なに拒んでいるような声色で、どうしてと疑問が頭に浮かぶがそれよりもマティスを引っ張り出すのが優先だった。
「マティス、顔出せ」
「……なんでですか」
「…その腕の傷、なんだ」
「……」
「(だんまり、か…)」
布団に潜り微動だにしないジュードにアルヴィンは内心溜め息をつく。
「なぁ、その傷昔は無かったよな?どうしたんだよ」
「…?…なんでアルヴィン先生が昔の僕を知ってるんですか」
「あー…それは…」
一瞬ジュードに伝えようか迷う。しかしほんとに迷ったのは一瞬で、口からはすぐにこぼれていった。
「俺は…俺が…アル兄だからだよ。」
その言葉を聞いたジュードは布団の中でもわかるくらい身体が跳ねた。
「マティス…?」
「アル兄ちゃん…?あなたが…?」
「そうだ」
アルヴィンが肯定するとジュードはいきなり布団をアルヴィンへと放り投げベッドから降り、叫びました。
「っ、マティス!?」
「アル兄ちゃんなんて、信じない…あなたも信じないっ!」
それだけ言うとジュードが保健室を出て行ってしまう音が聞こえる。
慌てて被せられた布団をアルヴィンが取り払う頃にはジュードは既に部屋にいなかった。
「あいつ、まだ熱もあるのにっ…」
そう呟くと後を追う為に部屋を出て行った。
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