泣いて綴れば触ってあげてもいい
2012/09/13 15:37
記憶喪失、刷り込み(軽い洗脳)がはいります。
アルジュ前提のジラジュです。ご注意を
どこか現実から離れたような場所にいる、自分と男の人。
「 は、僕とずっと一緒にいてくれる…?」
「ああ、ずっと一緒だ…ジュード」
問いかける僕にそう言ってくれる男の人…だけど顔が霞んでいて誰なのかわからない。
(あなたは、誰……?)
そう思った時ふっ、と意識が浮上した。
そのころジランドはジルニトラの最深部にある自室の机で報告書に目を通し、これからの計画を練っている
ファイザバードでの戦闘でマクスウェルは捕らえられなかったが側にいた少年を発見し、ここジルニトラに連れて帰り部屋へと閉じこめた。
後は目覚めるのを待ち、人質なりなにかに使えるだろう。
そう考えて連れてきた少年は未だベッドの上で眠っている。
そんな少年を見てジランドはふとあることを思い出した。
「そういやこいつ、アルフレドと恋仲だったな…そっちの意味でも人質になるか」
ベッドへと近寄り少年を見下ろしているとふと少年の瞼が震え、開いた
「やっとお目覚めか?悠長なこって」
ようやく目覚めた少年にそう吐き捨てる。
しかし少年から何の反応も返ってこないことに気づくと、改めて少年を見る。
その表情はジランドが思い浮かべたようなものではなく、呆然としていた。
そしてジランドを見ると一言
「…誰、ですか…?」
そうか細い声で呟いた。
「あ?何言ってやがる」
そう苛立ちを含んだ声で問いただすが、少年の表情は相変わらず変わらなかった
「あ、の…あなたは…?」
「………」
「あの……」
「おまえ、なんでここにいるかわかってるか?」
「……わからない、です…」
その答えを聞いたジランドは頭を抱えそうになる。
(どういうことだ…?流沼に流されて記憶でも失ったのか?)
訳の分からない現状にため息をつく。人質として利用しようとしていた少年が記憶喪失で使えないとは想定していなかった。
「ちっ」
「っ!」
ジランドの舌打ちにびくりと肩を揺らした少年にジランドは良いことを思いつく。
「おまえ、確かディラックの子供だったな?なんでここにいるか知りたいか?」
「ぁ…」
「捨てられたんだよ、おまえは。ディラックはおまえなんていらないそうだ。
たまたま俺が拾ってやったが」
(さて、どうなるか…)
そう思い少年を見ると泣きそうな、しかしどこか諦めたような表情を浮かべていた
「なんだ、わかってたのか?」
「僕はいい子じゃなかったから…だからいらないって…捨てられても仕方ないよね…」
そう話す少年に今まで考えていたものが消え、同時によくわからない感情がわき上がる
「……ここにいたいか?」
「ぇ…?」
「俺の言うことを聞いていればずっとここにいさせてやる。嫌だったらまた捨てるだけだが…どうだ?」
「っ…聞きます、だから…捨てないで、ください…」
泣きそうな声で自分に綴る少年に征服欲が満たされるのを感じた。
これはこれで楽しそうだと、頭の片隅で思いながらこれからの計画を練る
(さて、俺に従順になったあのガキを見てアルフレドはどんな顔をしてくれるか、楽しみだな)
これから来るであろう人物がどんな顔をするか、それを考えると口元は笑いを浮かべた
****
ファイザバードの戦闘後、カン・バルクに仲間が集まっても1人だけ見当たらない愛しい少年。
「あれ?ジュードは?」
「おたくらとは一緒じゃないのか?」
「いや、ファイザバードで別れてから見ていないが……そっちとも一緒ではなかったのか」
ただ1人行方がわからないジュードにアルヴィンは嫌な予感がしていた。
もしかしたら敵に捕らわれているかもしれない。
そう仲間も不安に思いながらもカン・バルクに残るアルクノアを掃討するガイアスと共に城から退け、襲撃をかけるための飛行艇を待っている時アルヴィン宛に一通の手紙が届いた。
その手紙の内容はアルヴィンの嫌な予感と仲間の不安を的中させていた。
『アルフレド、おまえの大事なものは俺が預かっている。取りに来るのも捨てるのもおまえの好きにしろ。 ジランド』
「大切なもの…?…まさか、」
ジュードはジランドに連れ浚われた…?
その考えに行き着いた時、怒りを込めた右手が勢いよく壁を殴る。
「くそっ!」
「びっくりしたぁ…アルヴィン君、どうしたの?」
「レイアか…悪い、なんでもねぇ」
「そう…ならいいんだけど……あ!そうそう、飛行艇もう動けるみたい。みんな集まってるよ!」
「あぁ、わかった。すぐ行く」
心配そうなレイアを見送ると壁に当てたままの右手を握りしめ、
「ジュード、待ってろ……必ず助けてやるからな」
そう呟いたアルヴィンの瞳は遠い場所にいるジュードへと向けられていた。
***
「まぁ、こんなものか。いいか?おまえはこの部屋からでるな。わかったな」
「はい、ジランド様」
すっかり自分に従順になった少年にジランドは気分がよくなる。
早くアルフレドの絶望しきった顔が見たいものだと思った矢先、部屋のブザーがけたたましく鳴り始めた。
「ようやくおいでなさったか。」
そう不敵な笑みを浮かべると近くの無線機を手に取り部下へと命令する。
「アルフレドだけはここまで通せ。あとの奴らは足止めしておけ」
『了解しました!』
「ガキ、さっきの命令は取り消しだ。俺について来い。離れるなよ」
「はい」
座っていたベッドから降りるとジランドの側までやってくる少年に笑みがこぼれる。
そして最後の仕上げとばかりにある場所へと向かった。
その頃アルヴィンはジルニトラ内を1人で走っていた。目指すは最深部、ジランドの元。
仲間とはジルニトラに潜入してまもなく敵の強襲を受けてバラバラになってしまった。
しかしアルヴィンは仲間に知られない内にジュードを助け出せると、そう思いただ最深部に向かって走り続けた。
これがジランドの罠だとは知らずに。
朧気な記憶を辿りようやく着いた広間にいたのは憎き叔父、ジランドと
「ジュード!!」
そのジランドの後ろに隠れるように立っていた愛しい少年、ジュードの姿があった。
「よう、遅かったな。待ちくたびれるとこだったぜ?」
「ジランドッ、ジュードは返して貰う」
「あぁ、いいぜ?こいつがそう言えばな」
「どういうことだ?」
よく考えてみればジュードがジランドに隠れるようにしているのはおかしい…。
そう思ってもう一度名前を呼ぼうとしたとき
「あの…あなたは誰ですか?…どうして僕の名前を知っているんですか…?」
「ジュー、ド?」
「僕はあなたの事、知らないです…あなたは誰ですか…?」
面と向かって知らない人だとジュードは言った。
そんなことあるはずないとジュードへと近寄るとジュードは何を思ったのか更にジランドに近寄り怯えたような目をする
「ジランドッ、これはどういうことだ!」
「あ?俺はなにもしてねぇよ。ただ」
ジランドがジュードの肩に手を置くとびくっ、とジュードの肩が跳ねた
「捨てられた可哀想な子供を拾っただけだ。なぁ?」
「っ…!」
「捨てられただって…?」
「なんなら今からでも捨てたっていいんだがな」
その言葉にジュードは勢いよく顔を上げ涙を流しながら
「ごめんなさいっ、捨てないで!なんでも言うこと聞くからっ!お願い、捨てないでっ」
ジランドに懇願するジュードに何も言えなくなった俺にジランドは
「これでおまえの大事なものはなくなったな」
目の前が真っ暗になりそうだった。
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