怖いものは怖い

2012/05/07 12:27



「やべっ、もう降ってきた」


薄暗い空からは雨が降っていて持ってきておいた傘を差して家へと急いでいた。
遠くで雷でも鳴っているのかゴロゴロという音がうっすらと聞こえてくる
その音を聞きながら今頃は家にいるであろう少年を思い浮かべて僅かに苦笑する


「何事もなきゃいいけどな」


少し遅くなっていた歩みを早足に変えて、少年の待つ家へと向かった









「ただいまー」


家の中は真っ暗で、先に帰って来ているはずの少年の姿は見当たらない。
その事実を確認して消えていたリビングの明かりを付けて自分の部屋へと向かう
ドアを開けてベッドを見るとそこには不自然に盛り上がった小さな山が出来ていた
よく見てみれば微かに震えているようにも見えた


「ジュード」


小さな山に声をかけると大袈裟なほどに肩を揺らした


「アル、兄ちゃん……?」

「そ、大丈夫か?ジュード」


布団の隙間から顔を覗かせたジュードの目は若干潤んでいて、怯えたような顔をしていた。


「遅くなってごめんな?」

「ううん、大丈……」


俺の方に向き直り布団から出ようとした瞬間狙ったかのように外が光り、続いて耳が痛くなるような雷鳴が響いた


「ひ、やぁぁぁぁぁ!!」

「ちょ、落ち着けジュード」


出ようとした布団に再び潜って震えるジュードを布団ごと抱き寄せて落ち着かせる


「大丈夫だって、兄ちゃんがいるだろ?」

「…ふ、ぇ…」


軽く泣き出してしまったジュードの背中を優しく撫でながら続ける


「兄ちゃんが傍にいてやるから。そうしたら怖くないだろ?」

「…う、…ん…」


ようやく落ちついたのか布団から出てきたジュードは申し訳無さそうな顔をして話し始めた


「ごめん、なさい…」

「ん?」

「その…怖、くて……ご飯…作れてないの…」


そう言って俯いてしまったジュードの頭を撫でながらジュードに


「大丈夫だって、これから一緒に作ればいいだろ?」

「いいの…?」

「ああ。雷も鳴り止んだしな」


窓の外は相変わらずの雨だったがもうほとんど雷の音は聞こえなかった。
それを確認したジュードはベッドから降りるとそのまま台所へと向かう。そのジュードの後を追いかけながら、今日は何を作るんだろうかなどと考えていた










数年後ーー






「また俺のベッドにいるの?ジュード」


俺のベッドに不自然な山を作っている人物にそう声をかけるともぞもぞと動いた山から返事が返ってくる


「ア、アル兄ちゃん?な、なん、でもないよ!」

「なんでもないわけないだろ」


そう言って勢いよく布団を引っ剥がすと同時に外から光と爆音が聞こえる


「ぴやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

「おいおい…まだ苦手なのか」


布団がないことによって余計怖かったのかジュードは、傍に立っていた俺に抱きつくとそのまま俺の胸に顔を押し付けて震えていた


「もう、大丈夫だからなー」

「子供扱い…しないでよ」

「雷に怖がってるようじゃまだまだ子供だな」


軽口を言い合いながらも震えるジュードの背中を撫でながら


「(この雷嫌い、治らなきゃいいな)」


などと本人にとっては失礼極まりない事を考えていた。




End






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