永遠と引き換えに
2012/05/02 23:47
僕とアルヴィンは一緒に暮らしている。
アルヴィンにプロポーズされた時は嬉しすぎて泣いてしまったくらい。
男同士の結婚は認められていないから、戸籍上は他人だけど僕の大切な人。
だけどーーーー
一緒に暮らして何年か経った時、アルヴィンの帰りが遅い事が度々あった。
その度にアルヴィンの服に微かな香水の匂いがついていることに気がついた
気がついたけど、言えなかった。
重いとか思われたり嫌われたりしたら生きていける自信が無かった
「…っく……ふっ…ぅ…」
アルヴィンのいない時に泣くのが僕の日課になってしまった。
泣いていた事をアルヴィンに知られたくなくて、アルヴィンがいる間は笑顔を欠かさないように気をつけた
そんなことを繰り返していてもアルヴィンは変わらず遅く帰ってきたり、香水の匂いがついていた
相変わらず1人で泣いている時に、仮面を付けた見たことない誰かが目の前に立っていた
「っ!…誰…!」
「そんなに警戒しないでよ、ボクはキミに用があるんだ」
「僕、に……?」
そう言うと仮面を付けた彼は僕に小さな錠剤の入った袋を渡してきてこう言った
「これを渡したかったんだ」
「何、これ……」
「アルヴィンを取り戻せる薬だよ」
「え、なんで、アルヴィンのことっ」
「これを使うかどうかはキミ次第だよ。」
「え……」
「使うのはキミの自由……じゃあね」
そう言って彼は目の前から消えてしまった。残された僕は手の上にある袋を見つめる
ーアルヴィンを取り戻せる、薬。
ダメだと思いつつもその誘惑に勝てなくてその日アルヴィンが食べるご飯に混ぜてしまった
次の日、アルヴィンがなかなか起きてこないことに不思議に思って起こしに行ったらアルヴィンはまだ寝ていて。
起こさないとと思って肩に揺らそうと手が触れた途端感じた冷たさに思わず手を引っ込めた
「アル、ヴィン……?」
信じられなくて首元に手を添わせると体温が感じられず、冷たいままだった
目の前の事実に震えと涙が止まらない。
なんで、どうして…?
何も考えられなくて呆然としているといつの間にか部屋にはあの時会った彼がいた
その姿を見た僕は彼に向かって叫ぶ。
「なんで、あんなものっ!」
「飲ませたのはキミでしょう?ボクはどうするか聞いたじゃない」
その言葉を聞いて反論も出来なくて僕は俯く
「キミも…使ってしまったね…」
「……?」
そう呟いた彼を見ると彼は仮面に手をあてて外した
付けていた仮面を外した彼の顔は僕とそっくりで僕は目を見開く
「君は…誰なの」
「ボクはジュードだよ。……違う世界のね」
悲しげな顔をして答える彼に僕は問う。
「僕もってどういうこと…?」
「ボクもあの薬でアルヴィンを殺してしまった。それ以来ボクはこの薬を貰っても使わない“僕”を探さないといけなくなった」
「…………」
「キミは使ってしまった、だからボクはもういかないと。」
「!?待っ…」
「これを渡しておく。どうするかはキミの自由だよ」
再び渡された薬を見ているといつの間にか彼はいなくなっていた。
少し考えた後、僕はアルヴィンに近寄って頬にキスすると手に持った薬を口に含む
「アルヴィン、ごめんねっ…」
動かないアルヴィンを抱き締めるように被さると睡魔に襲われそのまま目を閉じた。
永遠と引き換えに
End
後書き
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