どうしても無理

2012/04/06 23:26


とある依頼を終えてカラハ・シャールに戻る途中の休憩でこの事件は起きた


「ね、ジュード」


木の根本に座って本を読んでいた僕にレイアが声をかけてきた


「なに?レイア」

「ちょっとさ、こっちきて」

「?」


こっちだと自分の横を指さして笑うレイアに不思議に思ったけど、大人しく本にしおりを挟んで置くとレイアの方へ向かう


「どうしたのレイア?」

「ちょっと待っててね・・・あ、アルヴィン君!こっちきて!」

「どうしたよ?」

「ちょっと耳貸して」


そう言って僕からちょっと距離を取って二人でなにかを話している
といっても話してるのはレイアでアルヴィンは聞いてるだけなんだけど・・・
ようやく話し終わったのか二人が僕に向きなおる


「どうしたの・・・?二人とも」

「ううんジュードは気にしなくていいよ。
ほら、アルヴィンくん」

「ああ。ジュードちょっと我慢な」

「え?なに・・・ちょ、アルヴィン!」


何が起きてるのかわからずにされるがままだった僕は、あっという間にアルヴィンに後ろから抱きすくめられた


「これでいいのか?」

「うん、ばっちり!そのまま逃がさないでね」

「ちょ、レイア!アルヴィンも!何するの!!」

「わりぃな、頼まれたからさ」

「大丈夫だよ心配いらないから!」

「余計心配だよ!」

「ほら」

「ひっ・・・?!」

僕の前に出されたのはレイアの手に乗った小さな虫。
大きさは小さいものの虫。小さな足が蠢いてるのを見るだけで背筋に悪寒が走る


「や、やめて・・・!」

「大丈夫だって・・・あっ!」

「ちょ、嬢ちゃん」

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!・・・っ」

「ジュード!?」


手に虫を乗っけて近づいてきたレイアが僕の前まで近づいてきた時何かに躓いて転けた
当然持っていた虫は僕の方に飛んでくるわけで。
絶叫しながら近づいてくる虫がどうしても気持ち悪くて、そのままアルヴィンの腕の中で気を失った。






「んっ・・・」

「起きたか?ジュード」

「あれ、なんで、僕・・・」


目を覚ましたジュードはいつもより顔色が悪かった


「嬢ちゃんがジュードを脅かしてやろうって虫を目の前に持っていったんだよ。そしたら気絶しちまってな・・・
みんなは薪や水を取りにいってる。俺はここでジュードが起きるまでの見張りってとこだな」


「そっか・・・ごめんね」

「いや、こっちこそわりぃ。そんなに苦手だったなんて知らなかったからさ
・・・大丈夫か?」

「大丈夫・・・」


そういって笑ってくるジュードの顔はやはり青ざめていて、胸の奥で後悔する


「まだ顔色悪いし、もうちょっと寝てろよ。みんなが帰ってきたら起こすから」

「うん・・・お願いするね」


そう言ってふたたびジュードが寝転がろうとした時突然ジュードの体が跳ねた


「ひっ・・・?!」

「どうした?ジュード」

「ぁ、やだ、ゃ・・・アルヴィン!取って!!取ってぇぇぇぇぇ!!!!」

「ちょ、何が・・・」


いきなり泣いて抱きついてきたジュードに、何事かと目線を下に向けるとジュードの背中のあたりが僅かに動いてるのを見つけた。


「ひぅ・・・やだぁ・・・動かないで!」

「とりあえず、上着脱げジュード!」

「やだぁ・・・ふぅぅ・・・」

「くそ、無理矢理脱がせるしかないか・・・」


顔を真っ赤にして震えるジュードの服をなるべく早く脱がせると背中にいたのは小さな虫。
けれどその虫が少し動くだけでジュードの体が跳ねる


「もうちょっとだから我慢な」

「ふぇ・・・」

「・・・よし、取れた」

「・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・」


俺から離れて息を整えているジュードの顔は、未だに真っ赤になっていて目には涙が溜まっていた。


「(なんだこの殺傷力・・・!!)」


まだ伝えてはいないが俺はジュードが好きだ。そして色々と我慢している。色々ってのはまぁ・・・色々だ
そんな俺の気持ちにジュードが気づくわけもなく。
このまま伝えずにいようかとも思っていた矢先にこれだ。
・・・もう伝えてしまおうか
そう決心して口を開きかけた時ーーーー



「ただいまぁジュード大丈・・・」

「あー!!アルヴィンなにやってんだーー!!」

「ジュード・・・顔真っ赤です・・・!」

「ふむ・・・これはどういうことだ?アルヴィン」


見計らったかのように拾いや水汲みにいった女性陣+ローエンが帰ってきた。


「アルヴィンく〜ん?」

「え、いやこれは事情が・・・」

「問答無用だーーー!!」

「ちょ、待て、誤解だっ・・・」



「ほっほっほ、若いですねぇ・・・」

「レイアにエリーゼ・・・なんで怒ってるの・・・?」

「ジュードが気にすることはない。放っておけばいい」

「でも・・・」

「さて私たちは準備をしようか」

「うん・・・?」





「誤解だって言ってるじゃねぇか!」

「それでもアルヴィンにジュードは渡さないんだから」

「なっ!」

「ジュード以外は、みんな・・・知ってます」

「アルヴィンくんがジュードくんを好きなことー」

「ちょ・・・」

「でも許さないからね!」


ジュード以外のメンバーにばれていたなんて・・・ジュードは気づかないし、メンバーには邪魔されるし・・・。
・・・俺の恋は前途多難なようだ。

End






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