守る約束

2012/03/20 13:16



雨の降る中、僕は公園のベンチの上に座り込んで散々濡れてしまった服を震える手で掴みながら、今日の事を思い出していた。








親戚の人達と両親の仲が悪いのは前から知っていた…。
だけどこんなにも酷いなんて思っていなかった……




「ーー交通事故ですってよ」

「診療所は誰が継ぐんでしょうねぇ」

「1人息子はまだ15だからな…誰かが代わりになるしかないだろう」


遠くで親戚の人達が何かを話しているのを聞きながら僕はただ目の前にある両親の棺を見つめていた。






3人で旅行に行こうとしていたあの日、僕の目の前で事故は起こった。

大きなブレーキ音と共に何かがぶつかるような音がして振り返ると両親が乗っていた車に車がぶつかっていた
乗っていた両親は即死、駆けつけた警官に促されるまで僕はその場から動けなかった。





それから何も考えられなくて僕は親戚の人達が色々な話や手続きを進めているのを遠巻きに見ていることしか出来なかった

だからわからなかったんだ、あの人達がなにをしようとしていたのか。






葬式も終わって、家に向かうと家には誰か知らない人達が住んでいた。
状況がわからなくて玄関先で佇む僕を見つけた男の人は、少し大きめなキャリーを持ってくると無言で僕に渡して


「ここには私達が住むことになった。君はさっさと出て行きたまえ」


そう言い放った男の人はさっさとドアを閉めて中へ戻ってしまった。

僕はこの日、両親も家も無くしてしまった…








この公園に来てから何時間経ったのだろう
少し明るかった空は暗くなり、雨が降ってきたけど僕はここから動かなかった
………正確には動けなかった、だけど。
行く宛もないし、何より親戚の人達が僕を追い出したから頼れるはずもない。だからといってずっとここにいることも出来ないのに
雨に打たれてずぶ濡れになった服を握りしめて立てた膝に顔を埋める。
ボーッとして熱くなってきた体にどこか冷静な思考で風邪でも引いたかなと心の中で呟く
だんだん眠くなってきてそのままベンチの上に体を横にした。
誰かが近づいてきたような気配がしたけど、瞼を開けることが出来ずそのまま意識を失った。










次に目を覚ました時視界に入ったのは見知らぬ天井だった。
周りを見渡してみても知らない場所。


「なんで…ここ……僕……」


思ったように声が出なくて体も怠いし熱い…風邪だと思ったが何故公園にいた僕がこんな所にいるんだろう…?
意識を失う前を思い出そうとしてもボーッとした思考では何も思い出せなかった。

とりあえず手に力を入れて起きあがろうとした時急に手に力が入らなくなってよろけてしまった
あまりに突然すぎて熱で動けない体はそのまま床へ落ちそうになった


「……っ…!」


受けるだろう衝撃を察して僕は目を閉じた。

だけどいつまでたっても覚悟していた衝撃が来なくて不思議に思いながら目を開けると目の前に誰かの服が見えた


「……大丈夫か?」

「…ぇ……?」


頭上から聞こえた声に上を見ると眼鏡をかけて少し心配そうな顔をしている男の人がいた


「…誰……です、か……?」

「あぁ、俺はアルヴィンだ。」


支えていた僕の体をベッドに横たえると男の人ーアルヴィンはそう答えた


「公園で倒れてるのを見つけてな、熱もあったからつれて帰ってきたんだが…ほら、水飲め」

「…あり…がと…」


手渡された水を飲むと思ったより喉が乾いていたのかすぐに飲み干してしまった
僕の頬や額にアルヴィンの少し冷たい手が触れて熱を計る。


「3日間も眠ってたから心配だったが……熱もだいぶ下がってきたな」

「…3日間…も…?」

「おたく、どうしてあんな所にいたんだ…?」

「…それは……」

「…複雑そうだな…おたく、マティス先生んとこの息子だろ?」

「ぇ…」


初めて出会ったのになんで父さんの事をしっているの?
驚いてアルヴィンを見ていると右手で頭をかきながら話し始めた


「結構前にな、母さんを診てもらったんだ。そんときに、な」

「そう…だったんですか…」

「でだ、事情聞いてもいいか?」

「…実は……」


僕はアルヴィンに今まで起きた事のすべてを話した。
話してる最中アルヴィンは何も言わずに話を聞いてくれた。


「……という事なんだ」

「なるほどね……」


僕の話を聞き終わり何か考えるような仕草をしたアルヴィンはしばらくして口を開いた


「なぁ、行く場所ないなら此処にいろ」

「え…」

「行く場所ないんだろ?」

「う、うん‥」

「なら、此処に住めばいい」


至極当然という風に提案してくるアルヴィンに僕は申し訳ない気持ちで一杯になった


「で、でも!看病までしてもらって住まわせてもらうなんて‥迷惑なんじゃ…」

「あー…まぁ拾っちまったもんはしゃーねぇし。事情を聞いて、はいそうですかつってそのままお前を追い出すのもアレだろ?」


なぁ?と聞かれて言葉に詰まる。


「子供は素直に大人に甘えとけ」

「…あり…がとう…ござい、ます」

「んー…敬語は無しな」

「え…」

「一緒に暮らすのに敬語は堅苦しいだろ」

「わかりま…わ、わかった…」

「んじゃ、胃に優しいの作ってくるわ」


そう手を振って部屋から出て行くアルヴィンを見ながらシーツをかけて横になった
安心感からなのか疲労が出てきてそのまま眠りに落ちた。










「出来たぞ…って寝てるか」


ベッドに近寄り、眠っているジュードの頬を撫でる
穏やかな顔をしているジュードに笑みがこぼれる


ベンチの上で倒れているジュードを見たときは心臓が止まるかと思った
抱き上げた体は服はずぶ濡れなのに体は服越しでもわかるくらい熱くて。すぐに家へと連れ帰った
そのまま3日間も眠り続けるジュードのずっと傍にいたり…
仕事仲間が見たら引きそうなくらいの過保護だと思う。
だけどジュードの事は放っては置けなかった。
あの約束で……






「もし、私達になにかあったらお前にジュードを頼みたい」
「どういう事だ?」
「私達は親戚連中とは仲が良くない。そのうち何かされるだろう」
「………………」
「だからその時はお前に頼む」
「…はぁ…わかったよ…」
「頼んだからな」







「本当に何かありやがって」


少し前にジュードの父ディラックと交わした約束。
ジュードを頼むとあんなに頑固な奴が。


その約束があるからジュードを助けたわけじゃないが…
未だ眠っているジュードの髪を撫でて呟く。


「なんか放っておけないんだよな…」


撫でていた手を離して部屋を出て行った。









〜後日〜

「そういえば、アルヴィンの職業って何なの?」
「ん?弁護士」
「え?!」
「なんだよ、意外か?」
「(だってそんな感じ全く……!)」


End






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